トランプ大統領は何を読み誤ったのか?
トランプ大統領の読み誤りは、直近に続いた北朝鮮の“ミサイル恫喝”をものともせず、文在寅が韓国を危機に曝してまで、日韓間のGSOMIAの破棄を決断したことだ。おそらくトランプ大統領は北朝鮮の恫喝で、韓国が日米陣営に回帰すると踏んでいたはずだ。
しかし、そうはならなかった。逆に中国・北朝鮮側に近づいた。たとえて言うならば、今回のGSOMIA破棄は韓国が“ルビコン川”を渡り、中国陣営に加わる方向に一歩近づいたという感じだろう。すなわち、日米同盟という視点から見れば、韓国は安全保障面においても自ら「ホワイト国」であることを辞退・拒否したわけだ。
米中覇権争いの“活断層”が対馬海峡付近にまで南下する
朝鮮半島は、地政学の上では海洋国家の米国と大陸国家中国のせめぎ合いの地である。
これまで米中覇権争いの“活断層”は38度線付近にあった。米国にとって韓国は、中国とロシアの脅威のバッファーゾーンだった。しかし、GSOMIA破棄により、韓国が中国・北朝鮮の軍門に降るとなれば、その“活断層”は対馬海峡付近にまで南下する可能性がある。つまり、日本は、海洋国家米国の「防波堤・最前線」として米中覇権争いの「天王山」になる可能性があるのだ。
米中覇権争いの観点から見れば、今回のGSOMIA破棄は、中国による日韓の離間策がまんまと成功し、米韓同盟が弱体化に向かうことを意味する。中国はこの事態を見て「しめしめ」とほくそ笑んでいるに違いない。
これは、島国の小国・日本が大陸国家・中露の脅威を北海道正面、朝鮮半島正面、南西諸島正面の3正面から受けることを意味する。少子高齢化のための福祉予算が膨らむ日本で、この脅威に対処するに十分な防衛予算を捻出するのは不可能だ。