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金正恩は安倍政権に秋波を送ってくる

 北朝鮮(背後に中国がいる)は、2018年冬のピョンチャン五輪を機に、韓国に対して宥和外交を展開してきた。そのようにして文在寅政権を取り込み、結果的に反日に誘導した。金正恩の対韓国戦略が依拠するのは、兵法にある「遠交近攻の策」であろう。文在寅が日米と疎遠になることは、結果として「遠交(日朝・米朝関係の好転)」を意味する。

 トランプもそれを理解してか、北朝鮮のミサイル発射に目くじらを立てない。おそらく機を失せず、金正恩は日朝関係についても安倍政権に秋波を送ってくるだろう。近々、安倍政権に、拉致問題を解決するまたとないチャンスが訪れようとしていると、筆者は見立てている。

 金正恩は日韓・米韓関係を遮断して韓国を孤立させ、まるで“イルカの追い込み漁”さながらに、文在寅を中国陣営に誘い込む。その上で、自らが主導権を握り、銃砲を一発も撃つことなく、南北統一を達成するという戦略(筋書き)を描いているのだろう。

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金正恩朝鮮労働党委員長 ©共同通信社

GSOMIA破棄を企画・演出したのは……

 いずれにせよ、GSOMIA破棄に象徴される日韓のバトルは、米中覇権争いという大きなストーリーの中の1つのチャプターでしかない。現時点では、米国が怒り、中国はほくそ笑んでいる。今のところ、謀略の点で見れば中国が米国よりも一枚上手だ。

 私は、今回のGSOMIA破棄を企画・演出したのは、中国ではないかと思えてならない。我々日本人は、表面に見える外交ドラマの裏でこのような壮大な謀略のシナリオが展開している可能性を常に念頭に置くべきなのだ。とはいえ、JCIA(国家情報機関)を持たない“情報後進国”の日本では、真偽を確かめようもないのだが。

◆◆◆

 筆者の福山隆氏も参加した「文藝春秋」4月号の座談会、「『日韓断交』完全シミュレーション」では、元韓国大使の寺田輝介氏、韓国富士ゼロックス元会長の高杉暢也氏、同志社大学教授の浅羽祐樹氏、産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏が登場し、現実的な「日韓のあり方」を詳細に検討している。

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