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あっと驚く奇跡の瞬間を捉えた彫像

 最も大きい空間には、彫像の数々が並んでいて圧巻である。中でもひときわ流麗なシルエットで人の目を惹きつけるのが、《宝誌和尚立像》だ。宝誌和尚とは5~6世紀、六朝時代の中国の著名な僧。逸話に事欠かない人物であり、とりわけインパクトが大きいのは、あるとき和尚の顔が中央で左右に割れて、内側から十二面観音像の容貌が現れたという奇跡譚。

 彫像は、まさにその奇跡が起きた瞬間を捉えんとしている。見逃してはならないことが目の前で起こっている! そんな気にさせられて、その場から離れられなくなってしまう。

重文《宝誌和尚立像》(西往寺)

 ジャンルも時代もさまざまな作品群を通り抜け一巡すれば、畏敬の念を持って自然と対するアニミズムや、何か大きなものへの祈りの感情が、あちらこちらに充満していたことに気づかされる。このあたりが、時代を経ても変わらぬ日本文化の特質か。会場で、日本美術の精華とじっくり対話をしてみてほしい。