「涙するような場面ではなかったはずなのですが……」
視聴者の心に残る、泰樹の登場シーンは数えきれない。戦災で孤児となった幼いなつに、泰樹が「堂々と、ここで生きろ」と仕事の心得をときながらアイスクリームを一緒に食べる場面。東京に駆け落ちした孫の夕見子を迎えに行き、ろくでなしの相手の男を殴り、そして「一緒に帰るべ」とぶっきらぼうに声をかけるシーン。なつから結婚を告げられ号泣する姿……。
そして、これから最終回に至るある回でも、忘れられない撮影があったという。
草刈さんが忘れられない撮影とは、『真田丸』では夫婦役として共演した高畑淳子さん演じる、十勝の菓子屋「雪月」のおかみさん・小畑とよと、長い台詞を交わす場面だ。泰樹ととよは、同じ北海道開拓者の一世として、苦楽を共にした間柄だ。
「特に涙するような場面ではなかったはずなのですが、これまでの人生がどこか思い出されるのか、ふたりともこみ上げるものがありまして……。台詞をいっているうちに、ウッと涙がこみあげて、引っ込んで、またこみ上げて。あんなことって、なかなかないですねえ……」
実際にどのようなシーンになっているのか、ファンには見逃せない“神回”になりそうだ。
「文藝春秋」10月号では、『なつぞら』の撮影秘話、デビュー以来、貼られ続けた二枚目のレッテルに反発した20代、舞台で学んだこと、そして、家族への思いなどについて語った草刈正雄独占ロングインタビューを掲載している。ドラマとあわせて、ぜひ楽しんでほしい。
連続テレビ小説『なつぞら』
NHK総合 毎週月~土曜日 午前8時~8時15分 ほか
【文藝春秋 目次】<総力特集>日韓断絶 藤原正彦 佐藤 優/<特別寄稿>村上春樹 「至るところにある妄想」/<特集>がん医療の新常識
2019年10月号
2019年9月10日 発売
定価960円(税込)