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目のやり場に困った……5000人が丸出し

 理由は2つ。ポートランドには「芸術表現やメッセージのためなら、全裸は公然わいせつ罪にならない」という判例があり、人口に対するストリップ・クラブの数も全米で最も多い。全裸ライドに参加した筆者はさすがにテレビの収録だからパンツだけは穿いていたが、他の参加者は半分くらいは性器丸出しだった。つまり5千人くらいが珍満モロだったわけで、マイクを向けて話を聞いている間も、目のやり場に困った。で、そんな全裸ピープルを警察は逮捕するどころか、全裸ライダーのために自動車の規制をして全面協力した。

 ポートランドのスローガンは「Keep Portland Weird(ポートランドをヘンテコなままに)」で、モラルや常識に縛られない自由さがウリ。それを求めてキリスト教や何やらで自由のない南部や中西部から人々が移り住み、住宅ブームで市は大儲けしている。警察が協力するのも当たり前だ。てか、1万人じゃ逮捕できないしね。

 全裸になるもう1つの目的(というか言い訳?)は「ボディ・ポジティヴィティ」。これは「太っていようと痩せていようと、傷や欠損があろうと、どんな体も素晴らしい」と訴える運動。ファッション・モデルのような体型に憧れて、そうでない体の人を蔑視したり、自己嫌悪したり、拒食症になったり、整形にハマったりせず、それぞれの体を讃えましょう、ということ。ボディ・ポジティヴィティ運動の盛り上がりのなかで、ファッション・モデルにもLサイズのふくよか体型の人が増えてきた。

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イラスト 澤井健
イラスト 澤井健

 実は筆者は、全裸ライド取材が決まってから、56歳の老醜を視聴者にお見せしては申し訳ないと1カ月間ダイエットと筋トレに励んだのだが、現場ではもうブクブクやブヨブヨだらけで実に自由。お腹をつまんで気にしてた自分が恥ずかしくなった。

 そんな性器ポロリが街にあふれたら、子どもの教育に悪いざんすー! と思う人もいるだろう。ところが、全裸ライドはずっと住宅地の中を通って行き、沿道の人々は家族そろって家の前に出て、星条旗ふって応援してくれる。お父さんに肩車された幼い女の子が「セレブレイト・ボディズ・ポジティヴリー(体をポジティヴに祝福しよう)!」と叫ぶ。まあ、意味わかってないだろうけど。