「お待たせいたしました。お待たせしすぎたかもしれません。昭和最後のエロ事師、村西とおるでございます」
甲高い声でそう語るのは、“アダルトビデオの帝王”と呼ばれたAV監督・村西とおる氏(70)だ。
村西とおる氏の破天荒な半生をモデルにしたドラマ「全裸監督」がNetflixオリジナルドラマとして公開され、シーズン2の制作も決定。インターネット・ムービー・データベース(Amazon提供)の人気テレビ番組ランキングで、一時期世界中のあらゆる番組を差し置いてトップ50にもランクインしていた。
ドラマ人気と相まって、村西とおる氏本人にも注目が集まっている。ドラマでは描ききれなかった“帝王”の過去と現在を取材した。
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過去の記憶が蘇る、リアルなドラマ「全裸監督」
――Netflixのドラマ「全裸監督」(全8話)はご覧になりましたか?
村西 観ました。私は個人事務所を持っているんですけど、私の別に社長がいるんです。社長から「あんたおしゃべりだから、まだ観てない人にも全部喋っちゃうでしょ」と、なかなか観せてもらえなかったんです(笑)。でもこれ、私の物語なんでしょうけど、我ながら面白いですよね!
――お気に入りのシーンはありましたか?
村西 自分自身が涙したのは、第1話の親父とのシーンですね。父親から暴力を振るわれる母親を守ろうと父親に刃物を向けたら、母親から「父ちゃんに何すんだ!」と怒鳴られた。あのあとね、親父が家を出て行ったのですが、後から親戚に聞いたら「息子を親殺しにするわけにはいかない」という理由だったと。その記憶がまざまざと蘇ってまいりました。
当時はどこの家もそんなものだったんです。あの時代の諸悪の根源は貧乏。でも、あの世にいったらね、親父に泣いて謝りたい、たった一つの出来事ですね。