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山田孝之の演技で自らの不気味さを再発見した

――山田孝之さんの演技はいかがでしたか? 村西さんにそっくりだと評判ですが。

村西 いや~ナイスでしたね! 例えば女房に浮気されたシーン。あのね、浮気された男には、浮気されないとわからない衝撃、ショックがあるわけですよ。葛藤とか苦しみとか、言葉にできない恥辱をものの見事に演じていたんですね。「ああ、俺はあのとき本当にこんな顔をしてただろう」って再発見しましたね。

 彼の表情での演技は抜群ですよ。3~4秒なんだけど、得体の知れない表情するところあったでしょ?

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事務所にはドラマ「全裸監督」の新聞広告が飾られていた ©文藝春秋

――営業マン時代に商品を巧みに売りつけるシーンや、AV作品を撮るシーンで目付きが変わる瞬間がありました。

村西 あの目を見てね、あ、これなんだなと思ったんですねぇ。あの時代、多くの人が私に対して「何をやらかすかわからない」「この人は何者なのだろう」という不気味さを抱いていたんです。でも私には自分が不気味だなんていう感覚はなくて、ただ情熱に駆られていただけ。だから周囲の人が見る私と、私自身が思っている私には隔たりがあったんです。あの目を見て、ようやく周囲の人が私に感じていた不気味さがよくわかりましたよ。

人生で一番辛かった懲役370年

――ハワイでAV撮影をするシーンには度肝を抜かれました。セックスをしながらセスナで真珠湾に突入するAVを撮影して(実話)、米司法当局から懲役370年を求刑されていますよね。あのシーンでの山田さんの表情も鬼気迫るものがありました。

懲役370年のハワイ拘留から復帰後、第一作目の北海道ロケ (村西とおる事務所提供)

村西 あの狂気じみた顔がまた、私のバックボーンをよく汲み取ってくれているんですよ。戦後すぐの貧乏のなかでね、ガキ同士でみかんの皮を奪い合って食べたことがあったんです。それを蔑んで見るGI(アメリカ兵)の目が忘れられなかった。だからドラマでは描かれなかったけど、私は復讐の意味を込めて、みかんの皮を真珠湾の上空で剥いてやったんですよ(笑)。

 その後1年以上、アメリカから出国できなかったのですが、本当に、人生で一番辛い時間でした。唯一の救いが“テレフォンセックス”でしたね……。