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村西作品は日活ロマンポルノへのアンチテーゼだった

――と、いいますと?

村西 日活ロマンポルノではリアルな性が描かれなかったんです。出演者は局部が見えないように前貼りをしていましたからね。その頃の監督には芸術家気取りが多かったから、女優と男優が泣いたり喚いたりするような、演劇業界好きするようなシーンばかり丁寧に描いていた。でも人間の真実を描くには、性愛のシーンこそが大事なんです。視聴者もそれを求めている。布団のなかでガソゴソやってたらそれで終わりなんて、格好つけちゃいかん。白ブリーフにね、そんな挑戦者としての姿勢が象徴されているのでございます。

雑誌「ペントハウス」の撮影にて(村西とおる事務所提供)

――村西監督の作品は日活ロマンポルノへのアンチテーゼでもあった。

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村西 死んでも日活ロマンポルノの二番煎じにはならない。私はね「かつて人類が相見えなかった映像を撮らなければ、明日はない」という強迫観念に駆られていたんです。それがリアルなセックスの追究だったんです。

――反対意見もたくさんあったんですよね?

村西 それはすごかったですよ! AV業界草創期のメーカーの社長たちから、「本番セックスなんてとんでもない。そんなことしたら業界が潰される」「僕たちはこれで飯を食っていかないといけないんだ。あんたに当局から狙われるようなことされたら傍迷惑なんだよ」って、くだらない批判をたくさん受けた。

 でも私は会社を潰したあとの無一文の状態で、崖っぷちでAV業界に突入したから失敗するわけにはいかない。周りは私のことをチャレンジャーだとか、革命家だとか言いますが、食べるためにやらざるを得なかったんです。