昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

二人が恋愛に関して懺悔したいこと

スー やっぱり(笑)。人間関係って、年齢を重ねるにつれて友情から恋愛に変わっていくじゃないですか。恋愛に関して、今だから言える、懺悔したいこととかありますか? 

野宮 どうですかねえ。私、一回付き合うと長くて。途中から友達っぽくなっちゃう。

スー それも意外ですね。私には「ピチカート・ファイヴの野宮真貴」でインプリントされてるので、誰とは決めず、格好いいボーイフレンドがたくさんいて、今日は誰と遊ぼうかな、みたいなイメージがありました。

野宮 ピチカートのイメージだとね。当時は、年齢も非公開だったし、プライベートについても喋らなかったし、歌の世界の女性を演じてたからね。実際はぜんぜん違いますよ。

スー 一人の男性と長く続くタイプだったんですね。

野宮 そう。結婚するのかなー、しないのかなーってよくわかんなくなっちゃうやつ。

 

スー 結婚はいつでしたっけ?

野宮 遅いんですよ。36歳。

スー 当時にしては遅いかもしれないですね。今、36で結婚は普通ですけど。年下の旦那さん。それはすごく、野宮さんぽかったですよ。

野宮 ミュージシャンとしか付き合ったことがなかったんだけど、結婚した人は、ミュージシャンじゃなかったの。新鮮だった。年がいくつなのか、彼女がいるのか、結婚してるのかとかは、まったくどうでもよくて、とりあえずこっちの気持ちを伝えておこうと思って。

スー えー? 自分から告白したんですか?

野宮 そう。

スー すごい意外!

野宮 そういうことしないと何も始まらないじゃない。

スー 野宮真貴が! でもきっと、やり方がスマートなんでしょうね。

野宮 告白するというか、告白させるようにしたというか。

スー でしょ? そこを今日、話したいんですよ! バレンタインデーにチョコレートを手に猪突猛進するようなのはやっぱり難しいですよねぇ。

野宮 そうね。ひかれちゃうもんね。

スー 22歳、23歳くらいのすごくモテる女の子が、今、気になる男の子がいるって言うから、「告白すんの?」って聞いたら、何言ってるんだって顔で、「させるに決まってるじゃないですか」って。私、ぜんぜんわからなくて、「え? どうやって?」って聞いたら、その人の周りに行って、好意を持っているということを示せば、なんらかのアクションを向こうから起こしてくれるから、それだけで大丈夫ですよって。

野宮 試してみた?

スー 若干効果はありましたね。「男は自分から言いたいもんだ」ってなことを言う男性もいますからね。私は、昔から、求めすぎ問題があるんですよ。好きだったらできるでしょ?っていう態度に出ちゃう。完全に脅しですよね。当時は気づいてなかったんですけど、相手を試すようなことをたくさんしてました。良かれと思って余計なことをするっていうか。

 昔、クリスマスプレゼントで一番やっちまったのは、工夫、アイデア、オリジナリティ、そして相手に負担をかけない、重たくならない、という要素を全部兼ね備えようと思って、ジャケットをあげたんですね。でも、普通のジャケットだと高いので、ユニクロのを買って、ボタンを全部アンティークに付け替えたんです。そしたら、ボタンのほうが高くなっちゃって。自分としては会心の出来だったんだけど、相手には何も伝わらないっていう。あれは独りよがりだったなって。

野宮 そのジャケット、きっとかわいいね。

スー 野宮さんは、ありますか? 独りよがりだったクリスマスプレゼント。

野宮 あ、思い出した。手編みのセーター。途中まで編んだけど、難しくて、母親に仕上げてもらいました。

スー 野宮さんが、手編み! というか、半手編み。何色ですか?

野宮 エンジにグレーのトナカイの柄。

スー えー。イギリス王室のやばいセーターじゃないんだから(笑)。

野宮 気に入って着てくれてましたよ。

スー 野宮さん、小学校の頃から友達がいなくて、思春期には自分を「僕」と呼んで、彼氏に半手編みのトナカイ柄のセーターを贈るって、話聞いていると、完全にやばい人ですね(笑)。

野宮 そうかもね(笑)。

スー 世の女性たちは、勇気がもらえますよ。クラスの人気者じゃなかったのに「野宮真貴」になれるんだって。友達がいなくて、自分を「僕」と呼んでいた子が、こんなにも女であることを楽しむ「野宮真貴」になれるなんて。

野宮 女の人生は楽しいですよね。

友達がたくさんいると一人に過剰な期待をしなくなる

野宮 スーさんはクラスの人気者だったでしょ?

スー クラスの人気者のコバンザメとして最優秀でした。人気者のフィクサーみたいなところがあるというか。

野宮 男子からも女子からも慕われそう。

スー 男子から慕われたことは人生で一度もないです。口が達者な体のデカい女なんて、小中学生男子が慕うわけがないですよ。むしろ穢れのあるもののように見られていたような。そういう風に私を見ていた人に限って、近頃は「元気?」なんて気安く連絡が来るから「ふざけんな」って思いますけどね。

野宮 やったね。

スー そっか。「やったね」って思えばいいんだ(笑)。私はたしかに女友達は多かったですね。友達がたくさんいてよかったことは、相手に対する期待値を分散できることなんです。恋愛は相手が1人なので、私が恋愛に期待するものをその1人にぶつけると、間違いなく過積載になってしまう。でも、友達の場合は、「映画に行くならこの子」「悩みをじっくり聞いてもらうならこの子」というように、自分のなかで配分をしているから、1人に対する期待が大きくならない。恋愛も同じで、1人の人に、期待を過積載してはいけないなって、43歳になって改めて思いますね。

 

(後編につづく)

構成:須永貴子 撮影:釜谷洋史/文藝春秋


のみや・まき ピチカート・ファイヴ3代目ヴォーカリスト。「元祖渋谷系の女王」として活躍。2001年ピチカート解散後、ソロ活動を開始。音楽、エッセイ、ファッション、ビューティー&ヘルスなど多方面で活動する。2016年にリリースした、アルバム『男と女 ~野宮真貴、フレンチ渋谷系を歌う。』はオリコン&ビルボードジャズチャート1位を獲得しロングセラーとなる。2月22日、同アルバムから7inch.アナログ盤発売。アーティストHP:www.missmakinomiya.com

じぇーん・すー 作詞家、ラジオパーソナリティ、コラムニスト。音楽クリエーター集団agehaspringsでの作詞家としての活動に加え、TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」でパーソナリティを務める。著書に『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ文庫)、『ジェーン・スー 相談は踊る』(ポプラ社)があり、『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)で第31回講談社エッセイ賞を受賞。

女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。

ジェーン・スー(著)

文藝春秋
2016年5月28日 発売

購入する

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー