前編で、意外に女友達が少ないことを吐露した野宮真貴さん。一方、ジェーン・スーさんは、女友達も多く、時に喧嘩をするくらい濃密な関係を築いてきたよう。『赤い口紅があればいい』と『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』で、それぞれ女性たちに勇気を与えた二人が、自らの黒歴史さえも赤裸々に語り合います。
徹底的に正論で相手を詰めても何も残らない
ジェーン・スー(以下、スー) 野宮さんてケンカします?
野宮真貴(以下、野宮) あんまりしないですね。夫婦喧嘩はあるけどね。
スー どんな?
野宮 二つしか理由がなくて、水回りと、時間。
スー フランスの観念的な映画のタイトルみたい。「水回りと時間」。
野宮 洗面所とか水回り関係は、バシャーンみたいに水滴だらけになってると、私はすごく気になるけど、相手は気にならない。注意すると一瞬治るけど、すぐに元通り。時間については、私は早め早めに支度して行きたいタイプ。何が途中であるかわからないから。でも、相手はぎりぎり。私が焦ってると「大丈夫だよー」って。
スー はい、むしろ円満だってことがわかりました。
野宮 スーさんはケンカする?
スー しますよ。恋愛関係だと「ちょっと座って」みたいなことやります。でも、「ちょっと座って」からは何も生まれないことも、一番やっちゃいけないことだということもわかったので、今はできるだけしないようにしてる。徹底的な詰将棋をすると、勝利感は得られるけれど、焼け野原しか残らない。そんな戦争はしたくない。
野宮 最近はどうやって収めるようにしているの?
スー 男の人に「私は怒っている」と言うと機械がショートしたみたいに話を聞かなくなるので、「怒っている」を、「困っている」か「傷ついている」に変換して伝えます。
野宮 そういうことを、落ち着いた口調で言うと効くと思う。
スー 女友達とケンカするときも、そうしてますね。
野宮 (心底驚いた様子で)え? 女友達とケンカなんてするの!?
スー 何年かに一回、「その言い方はちょっと気に入らない」とか言われて、「ごめんごめん」とか。「この件についてもうちょっとじっくり聞いてほしかったのにああいうあしらわれ方は嫌だった」とか。お互い、この友人関係を絶対に失ってはいけないという思いがあるので、ケンカをしても仲良しです。
女友達と喧嘩できる人、できない人の違いとは?
スー 女友達関係では、10年に一回、地雷を踏みます。恋愛と同じような関係を友情に持ち込む女性というのがいるんですよ。つまり、私がどこまで耐えられるのかを試す女性がいる。「ねえねえ、聞いて聞いて! わー!」って話し出して、私がそれに耐えられないと、「友達なのに」とか「私はこんなにしてあげたのに」とか不満を募らせて、勝手に縁を切られてしまう。最近もありました。
野宮 (絶句)……!
スー 何が言いたいかというと、恋人だろうが友人だろうが、他者に対して立ち入ったことはやってはいけないということ。大切な女友達にやらないことは、彼氏にもやらないようにすると、だいたいうまくいく。大切な女友達から「今月ピンチ! お金ない! 安いところでいい?」と言われたら、鳥貴族で問題ないじゃないですか。その子のプライドもあるから、「おごるから高いところに行こう」とも言わないし。だけど、彼氏だと「あたしとデートだってわかっていたはずなのに、なんでその日にお金がないの?」とか言っちゃうじゃないですか。それはダメだなって。
野宮 若いころはねー。
スー 彼氏づらかよ、彼女づらかよ、と言いたくなるような行為、立ち入ったことは、彼氏だろうが彼女だろうが他者に対してやってはいけないと思うんですよ。
野宮 そうね。恋愛のときはトキメキによって我慢できたりするけど、結婚するとまた違うしね。トキメキは信頼に変わって、それがなくなったら離婚するんでしょうね。
スー 怖い(笑)。夫婦間の信頼ってなんですか?
野宮 うちの場合は、お互いに仕事をしているので、それぞれの世界を尊重することかな。悩みがあれば一緒に話したりもしますけど。
スー 信頼とは尊重である。しっくりきますね。相手を尊重することが、信頼の証の一つ。
野宮 それがなくなっちゃうと、けっこうズケズケと言っちゃいますよね。
スー 夫婦だけじゃなく、親子でもわりとそのあたりの相手の領域に踏み込みがちですよね。
野宮 甘えちゃうんでしょうね。