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野宮真貴×ジェーン・スー「男で痛い目を見ていない女は、女友達が少ない!?」

口紅美人と甲冑女が、友情と恋愛を語る #2

note

悪い男に引っかかると、女友達が必要になる

スー この間、すごいことに気づいちゃったんです。「あたしたち最高だよね!」「女友達最高!」みたいに仲のいい〈ジェーン・スー軍団〉があるんですけど、私達のように女友達に重きを置くタイプがいる一方で、女友達がそんなに必要じゃない人もいるんですよね。なにが違うんだろうと思ったら、そういうタイプは悪い男に引っかかったことがないんですよ。

野宮 なるほど。

スー 私達が女友達に集合をかけるときは、男でトラブったときか、男がいないときなんです。「彼氏なんかいらない! 女友達最高!」って怪気炎を上げていたのは単に、恋愛依存の反動だっただけなんですよね。早めに結婚した子や、恋愛に依存していない子は、そこまで女友達を必要としていないし、期待もしていないんです。野宮さんはどうですか?

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野宮 私の場合は、女性だと緊張しちゃうという性格が大きいかもしれない。仲間はずれにされたくないから気を使っちゃう。

スー へー! 男友達は?

野宮 あんまりいない(笑)。今は、男一人、女一人、その中間の人が一人。なんでも喋れるから、ゲイの人が一番仲良くなれるかもしれない。

 

スー 今でもやっぱり少ないんですね。困ることはありますか?

野宮 特にないかな。

スー この社会ではなんとなく友達が多いことが良しとされているので、友達が少ないことをコンプレックスに感じている人ってけっこう多いと思うんです。でも、そんなにたくさんの友達は必要ないと。

野宮 ないと思う。みんな、そんなに友達いるの? スーさんは、親友と呼べる人はどれくらいいるの?

スー そうなると親友の定義が必要になるんですけど、大学時代に経営学の先生が言っていた「親友というのは、夜中の2時に電話しても、『どうしたの?』って電話に出てくれる人だ」というのは確かになと思って、今でも覚えてます。夜中の2時に躊躇なく電話できて、そんな時間にかかってきたら心配になる相手。そう考えると、女で7〜8人いますね。

野宮 まあ、いたほうがいいとは思うけど、そんなにたくさんいなくても、気が合う人が1人いればいいんじゃないかなと思います。1人も気が合う人がいなくても、本人が良ければいいと思うし。友だちがいなくても好きなものがあれば生きていける人っているじゃない?

スー 夢中になれるものですね。

野宮 そう。だから、友達の数は重要じゃないと思います。

友達関係に年齢差が関係なくなるおもしろさ

スー 女性が年をとるといろいろといいことがあるんですけど、どんどん年齢差を感じなくなることはなかでも一番いいことかもしれない。野宮さんは明らかに私よりも経験値が高い先輩ですけど、「下手な口を利いたら嫌われる」という部活の先輩みたいな感じではなくて、もっとゆるやかな関係になれる。野宮さんと私は10年前に知り合ったとき、こんな風には喋れませんでしたよね。

野宮 話せなかった。お仕事から始まった関係だったし、私が女の人の前では緊張しちゃって、なかなか仲良くなれないタイプでもあるし。でも今は、一回り以上違うけど、年齢差とか感じない。

スー 10年前はあった年齢の壁が、解消されましたよね。女の人は、自分がいるステージやポジションで分断されがちなんですけど、されなくていいと思います。(独身、未婚、子持ち、子無しなどで)はっきりと分断せず、ぼやーっとしておけば、また関係性が変わっていく。私の周りでも、結婚して一度距離ができても、離婚して戻ってくる女友達の多いこと多いこと(笑)。

野宮 (笑)

スー 以前、女友達が「寂しいと人はおかしくなる」って言ってたんですけど、最近とみにそう思います。過剰に攻撃的になったり、被害妄想に苛まれたりして、他の人との人間関係の距離の測り方を見誤ってしまう。大人って言葉で自分を縛っちゃうから。ぜんぜん大丈夫じゃないのに「私は大丈夫」と自分の感情に蓋をしてしまう。もっと自分の寂しさに敏感になって、自分が寂しかったらちゃんとそれを認めて、「じゃあどうする?」ということをやっていかないと。自分とちゃんと向き合うことが、他者との人間関係につながるんだなって思います。

 

構成:須永貴子 撮影:釜谷洋史/文藝春秋


のみや・まき ピチカート・ファイヴ3代目ヴォーカリスト。「元祖渋谷系の女王」として活躍。2001年ピチカート解散後、ソロ活動を開始。音楽、エッセイ、ファッション、ビューティー&ヘルスなど多方面で活動する。2016年にリリースした、アルバム『男と女 ~野宮真貴、フレンチ渋谷系を歌う。』はオリコン&ビルボードジャズチャート1位を獲得しロングセラーとなる。2月22日、同アルバムから7inch.アナログ盤発売。アーティストHP:www.missmakinomiya.com

じぇーん・すー 作詞家、ラジオパーソナリティ、コラムニスト。音楽クリエーター集団agehaspringsでの作詞家としての活動に加え、TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」でパーソナリティを務める。著書に『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ文庫)、『ジェーン・スー 相談は踊る』(ポプラ社)があり、『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)で第31回講談社エッセイ賞を受賞。

女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。

ジェーン・スー(著)

文藝春秋
2016年5月28日 発売

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