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大腸がん検診にはどれくらいの効果があるのか?

 例えば、「大腸がん検診」のファクト・ボックスを見てほしい。

 徳田医師はこう解説する。

「この図では、45歳以上の1000人が、日本でも推奨されている『便潜血検査』を定期的に受けた場合、将来どうなるかを示しています。

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 まず、検診を受けなかった場合(非検診群)を見てみましょう。1000人のうち、7人が大腸がんで亡くなるとあります。一方、検査に伴う合併症を被る人は、当然のことながら1人もいません。

 では、検診を受けた場合(検診群)はどうなるでしょう。1000人のうち6人が大腸がんで亡くなるとあります。つまり、大腸がん検診を定期的に受ければ、1000人のうち1人が大腸がん死を免れる――これが、大腸がん検診によって得られる効果なのです。

 ですが、効果が得られる反面、検診を受けることによってリスクを被る人も生じます。その一つが『偽陽性』です。 

©iStock.com

 偽陽性とは、結果的に大腸がんでなかったのに、検診で『陽性』とされることを言います。残念ながら、現在の医学での検診技術では、100%正確な検査はまだ無いために、偽陽性の人が出てきます。

 ファクト・ボックスでは、偽陽性で大腸内視鏡などの精密検査を受ける人が12人です。また逆に、実際には大腸がんが隠れていたのに、がんではなかったと診断されてしまう『偽陰性』の人も6人です。

 つまり、大腸がん検診を受けると、1000人のうち1人が大腸がんによる死を免れる一方で、12人が偽陽性、そして6人が偽陰性のリスクを被ることになるのです」

「ファクト・ボックスを元に国民全体で議論するべき」

 医学論文では、数字がパーセントなどの相対的な数字で表されるために、効果が過大評価されがちで、一般の人には理解しづらかった。一方ファクト・ボックスでは、人数など自然数で結果が出ているため分かりやすく、患者自身の判断に役立つ。

文藝春秋10月号

「文藝春秋」10月号では、この他にも、乳がん検診や前立腺がん検診、さらに、抗生物質や、血中のコレステロール値を下げる薬であるスタチンの投与について、ファクト・ボックスと共に解説している。

 徳田医師はこう続けた。

「私たちが使える医療費や税金には限りがあります。だとしたら、価値に乏しい医療行為にお金をつぎ込むのはなるべく減らし、より価値の高いエビデンスの確立した予防政策にシフトするよう、ファクト・ボックスを元に国民全体で議論するべきだと私は考えています」