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誰もが“あおり運転”の加害者になりうる? 「怒りの感情と上手に付き合う方法」とは

日本アンガーマネジメント協会・安藤俊介代表理事に聞く

2019/09/21

genre : ニュース, 社会

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 常磐自動車道で煽り運転とそれにともなう殴打事件が発生し、運転していた男が逮捕された。ドライブレコーダーがあったことで事件が映像で記録されたことの影響が大きい。東名高速道路でも、あおり運転をした上に、エアガンのようなものを発射したことで男が逮捕された。

 こうしたあおり運転が社会問題化する中で、厳罰化という話も出てきた。ドライブレコーダーも売れているという。しかし、運転手の「感情をコントロールする」側面からの取り組みもある。日本アンガーマネジメント協会の安藤俊介代表理事に話を聞いた。

安藤俊介代表理事(アンガーマネジメント協会提供)

「怒らない」のではなく「上手に怒る」

――アンガーマネジメントとはなんでしょうか?

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安藤 怒りの感情と上手に付き合うための、心理トレーニングです。1970年代にアメリカで生まれたとされています。「怒らない」のではなくて、「上手に怒る」「必要のないことは怒らなくて済むようになる」という線引きを目指しています。

 当初、犯罪者の矯正プログラムの側面が強かったんですが、時代の変遷とともに一般化しました。企業研修、教育、人間関係のカウンセリング、アスリートのメンタルトレーニングなど、幅広い分野に転用されています。最近では、「道徳」の教科書で「生命尊重」や「いじめ防止」との関連で取り上げられました。企業向けの講座ではハラスメント防止として需要が高いのです。

 アメリカでは、軽犯罪を犯した場合、矯正教育をしなさいという裁判所の命令が出ることがあります。その中で、DVなど犯罪の状況や内容によっては、アンガーマネジメント命令が出る場合もあります。

©iStock.com

――自動車の運転との関連では、どう言えるのでしょうか?

安藤 アメリカでは、ロードレイジ(Road rage)と言っていますが、自動車の運転にともなう暴力行為、粗暴行為をいいます。日本の、危険運転やあおり運転よりも概念は広く、舌打ちをしたりとか、特定のジェスチャーをしたりすることも含んでいます。そのため、誰でも、加害者にも被害者にもなりえると言われています。

 怒りの感情と自動車の運転は、密接に関連しているとアメリカでは考えられています。車社会という要素は大きく、怒りの感情を発露する場面が多いのです。