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誰もが“あおり運転”の加害者になりうる? 「怒りの感情と上手に付き合う方法」とは

日本アンガーマネジメント協会・安藤俊介代表理事に聞く

2019/09/21

genre : ニュース, 社会

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厳罰化だけではなくならない「あおり運転」

――日本ではどのように考えられていますか?

安藤 あおり運転や危険運転は日本でも昔からあったわけですが、社会的に「犯罪になりえるもの」という認知がありませんでした。しかし、2017年に起きた東名高速道路での夫婦死亡事件、それから、2019年8月の常磐自動車道の殴打事件を受けて、社会的に考えないといけないという機運がやっと出てきたと思います。

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 アメリカですと、極端に言えば、スピード違反をしても、アンガーマネジメント命令が裁判所から出る場合もあります。しかし、日本では矯正プログラムの仕組みがありませんので、罰金でおしまいですよね。

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 あおり運転に関して、山本順三国家公安委員長(当時)が、厳罰化を含めた道交法改正を目指すことを発表しました。日本では、「矯正よりも厳罰化」という流れになってしまいます。「厳罰化すれば、犯罪がなくなるのか?」という議論と同じですが、それだけではあおり運転はなくならないと思います。

――運転中に、イラついてしまうことは仕方がないと思いますが、それだけの人と、危険運転やあおり運転をする人との差はありますか?

安藤 急いでイラつくことがありますよね。普段の生活のなかで、街の中でも突っかかる人、ネット炎上に加担する人を考えると、少数派だとは思うんですけど、一定のタガが外れたときに、そうした行為をしてしまうということでしょうね。

被害にあわないために一番大事なことは

 どんな性格の人でもなりえますが、あえて言えば、急いでいる人。怒りを溜め込んでいる人です。だから、穏やかな人でも急いでいる人のほうがイライラします。誰もが加害者になりえます。だからこそ、時間に余裕を持って動きなさい、ということなんです。

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――常磐道の殴打事件で学ぶことはありますか?

安藤 僕らからすれば、特に変わったことはありません。たまたま、今回はドライブレコーダーが設置されていて、SNSで拡散しただけです。目に見えないところではあれくらいのことがあると思っています。

 ユーチューブで「Road rage」と英語で検索してみてください。殴り合いの映像はたくさん出てきます。身近に感じつつも、あまり見たことはないので衝撃的だったのでしょう。

 被害にあわないために一番大事なことは関わらないことです。事件の被害者は、窓を開けてしまっています。アンガーマネジメントを知っていれば、何を言われても窓やドアを開けてはいけない。すぐ警察に電話しましょう。「ひどいのに絡まれたが、まさか警察に電話する案件ではない」と思ってはいけません。

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――あおり運転をしないための取り組みには、どんなものがありますか?

安藤 私たちも、東名での事件をきっかけに、「やらなければならない」と取り組みを始めました。アメリカは1970年代からですので、日本では、40年遅れています。