※こちらは公募企画「第1期“書く将棋”新人王戦」に届いた56本の原稿のなかから「遠山雄亮賞」を受賞して入選したコラムです。おもしろいと思ったら文末の「歩兵ボタン」を押して投票してください!

 遠山雄亮六段の推薦コメント「棋士を目指す子供たちにはそれぞれに人生があります。原稿を拝読して教えてきた子供たちのことが脳裏によぎりグッときました。筆者にはこれまで温かい目で見つめてきた子供たちの人生を今後も伝えてほしいと強く思いました」

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なんだか顔まで賢くなったように見えてくる

「失礼します」。制服姿の奨励会員が分厚い将棋盤に並べられた駒を5枚手に取って、振り駒を始める。落ち着いた彼の様子に安心し、そして嬉しくなる。

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「ずいぶん立派になったねえ。眠くなっても頑張って」

 ニコニコ生放送が映るパソコンに向かって話しかける。彼は、つい1年前まで将棋大会によく参加していた。よく言えば活発な子どもで、小学校低学年の頃は将棋大会に参加しても、騒いだり、会場外の花壇の杭をひっこ抜いたりしていた。将棋が強くなるにつれ、だんだん落ち着いてはきたものの、中学生の全国大会の代表を決める県予選で格下の相手に負けて代表を逃したときは、ふてくされ褒められた態度ではなかった。そんな彼とは思えないしっかりした態度に、なんだか顔まで賢くなったように見えてくる。

 私はとある県の支部連合会の役員の一人。将棋大会を運営するボランティア団体のようなものだ。主に全国大会の県代表を選ぶための大会の運営をしている。

 全国大会には、小学生名人戦、中学選抜、高校竜王戦など年代別のものと、アマ名人戦など年齢に関わらず出られるものがある。棋士、女流棋士のほぼ全員が小中学生の大会で好成績を収めた後に、棋士の養成機関である奨励会や、奨励会を目指す場でもあり女流棋士の養成機関でもある研修会に入っていて、将棋大会はプロ棋士が育つのに必要不可欠なものだ。