※こちらは公募企画「第1期“書く将棋”新人王戦」に届いた56本の原稿のなかから「文春将棋賞」を受賞して入選したコラムです。おもしろいと思ったら文末の「歩兵ボタン」を押して投票してください!
編集部の推薦コメント「編集者は、読者をいかに楽しませるかという点を何よりも大事にしています。大崎さんの原稿は、頭からオチまで、読者を面白がらせることだけを考えて構成されていました。将棋に詳しくない人まで引き込む、まさにプロの仕業です」
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かれこれ16年、吉本新喜劇の台本を書いています。で、突然ですが、ここでクイズ。
次に挙げるのは吉本新喜劇の台本の一部ですが、1ヵ所間違いがあります。さて、どこでしょう?
〈登場人物〉
うどん屋のアルバイト……すち子
うどん屋の従業員……清水けんじ
うどん屋の女将……浅香あき恵
清水「女将さん、すち子さんがまた遅刻したんですよ。もうクビにしましょう」
あき恵「そうね。すち子さん、今日限りでクビよ」
すち子「そんなあ。許してくださいよ」
あき恵「ダメよ」
すち子「お願いしますよ」
あき恵「ダメと言ったらダーメ」
すち子「北川景子さん、許してくださいよ」
あき恵「許します」
清水「許すんですか!? お世辞に決まってますやん」
吉本新喜劇になじみのないかたは、役者さんの名前を見てもピンと来ないかもしれませんが、このクイズでは、ひとまず役者さんに関する情報は不要です。
……はい。では、どこが間違っているか、お分かりになりましたか?
言葉の順番が大事なんですね
正解は、「北川景子さん、許してくださいよ」の部分。ここは正しくは、「許してくださいよ、北川景子さん」と言わないといけない。「北川景子さん」の方をあとに持ってくるのが演芸台本の書き方。「北川景子さん」と「許します」の間に言葉を挟むと、テンポが悪くなって、笑いも目減りする。言葉の順番が大事なんですね。
ところで、順番といえば、将棋の解説を聞いていると、「手順前後に注意」なんていう表現を時々耳にします。
「ここに飛車を成って、相手が同玉と取れば、ここに角を打って詰みです。でも、先に角を打つと、王様にこう逃げられて詰みません。手順前後に注意ですね」
という具合に使う。将棋もお笑いも、順番がとても大事なんですね。