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では、お笑いとAIの関係はどうか

 現在、多くの棋士が研究にソフトを使い、ソフト発の新手が公式戦で現れることも珍しくなくなっています。動画中継される対局では、画面上部に、ソフトの「評価値」が表示されることが、もう当たり前になってきました。「対立」から「共存」へ、棋士とソフトの関係性はすっかり移行したように感じます。

 では、お笑いとAIの関係はどうか。

©iStock.com

 AIで作成した漫才台本を演じる、漫才ロボットがいるのをご存じでしょうか。甲南大学で研究・開発されているこのロボットは、2018年、「M-1グランプリ」というプロ・アマ不問の漫才大会にエントリーしています。が、こちらのロボットに関しては、プロを圧倒する将棋ソフトのような強さは、いまだ獲得できていないようで、結果は予選敗退だったようです。とはいえ、テクノロジーは日進月歩、この先はわからない。特に漫才の台本に関しては、プロの作家を凌ぐ完成度のものを、ソフトが作成する日が遠からず来るような気がしています。

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ファンは棋士の個性を愛でている

 将棋ソフトが急激に強くなり始めた頃、ソフトの出現により、プロ棋士の存在意義が脅かされるのではないか、と危惧する声が聞かれました。が、すでに書いた通り、プロ棋士とソフトは今、しっかりと共存しています。ソフトはほとんど使いませんと公言している棋士の先生もいれば、人間との研究会はすべてやめて、ソフトでのみ研究しています、と語る先生もいる。ソフトとの距離の取り方も含めて、棋士の先生がたには各々「個性」があり、将棋ファン、特に「観る将」と呼ばれる層のファンは、その個性を愛でている。だから、いくらソフトが強くなっても、棋士の存在意義は保たれるのでしょう。

 で、アナロジーで考えるならば、ですよ。優れた台本を作成するソフトが出現しても、芸人の存在意義は揺らぐことはないでしょう。が、演芸作家についてはどうでしょうか。疲れず、黙々と働き、これまでの定跡を覆すような斬新なネタを提出する台本作成ソフトが出現し、芸人の多くがそれを使うようになったら、作家は……うーん、困りました。

 コンピュータは熱に弱いと聞きましたから、ストーブでも当てましょうか。

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