※こちらは公募企画「第1期“書く将棋”新人王戦」に届いた56本の原稿のなかから「松本渚賞」を受賞して入選したコラムです。おもしろいと思ったら文末の「歩兵ボタン」を押して投票してください!
松本渚さんの推薦コメント「観る将の生態標本として博物館に飾りたい。それほどに WEBで楽しむ 『観る将棋ファン』の1日を鮮やかに且つ愉快に描いていると感じました。思わず『フフフ』と笑ってしまうような、まるで自分のことを書かれているかのような錯覚に陥るほどの描写力、そして将棋界への愛の深さに感動しました」
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《観る将》はどうやら《イベント参加型観る将》と《ネット中心系観る将》に分かれているようである。
両方を兼ねる猛者もいるが、今回は私――とある《WEB将》の観戦スタイルをお伝えしたい。
すぐにおやつの10時がやってくる
朝、《放映開始前》の画面を見ながらリロードを繰り返す。対局開始時に《定刻》または《帝国》とコメントを入力するためである。
解説の先生方の挨拶と、両対局者の紹介が始まり、初日の振り返りが盤上で再現される。
知ってる。会社でこっそり昨日観てた。
先生がたのお姿チェック。お召し物似合う。小物もチェック。髪が跳ねてる。最近お痩せになった? お飲み物チェック。
午前。解説の先生方のやわらかトークを聞きつつゆるゆる笑い、アンケートのボタンを押す。次の一手なんか当たるわけないので、先生の一押しを信用する。
すぐにおやつの10時がやってくる。
内容の発表を待って甘味を買いに行く。その点叡王戦は優れていて、ローソンからおやつが提供されるのがわかっているので、あらかじめそれらしいスイーツを買いそろえておくのである。バスチーおいしい。
おやつを堪能しながら、2日目ともなるとやや変調気味な盤面の解説を聞きながら、午前中を終わる。
君らの目はX線か
昼が来てもWEB将は簡単には食事をしない。まずは休憩中の詰将棋を確認する。三手詰めは解けるが、五手詰めはだいたい2割くらいが解けない。
なおも考えつつ待っていると、お昼の速報が流れてくる。それを確認し、スーパーにお寿司を買いにいく。
待っている間も詰将棋を考えている。解けたら送る。ちなみに何度か正解しているはずだが、当選したことはない。
午後、先生方が扇子を開き始める。ハゲタカのような目で書かれている文字を読み取ろうとする。最近は筆跡で書かれた方の名前がわかるようになってきた。コメント上で情報の出し合い、分析、推測が行なわれる。君らの目はX線か、ってくらい読む人がいる。
15時。おやつも発表を待ってから動く。
ふう、この日2個目のケーキか。
脳を酷使して、糖分などほとんど蒸発するに等しい先生方と違い、1日2個のケーキのカロリーは私の体重を直撃する。実は、昨日の昼も先生の食事をまねてうな重を食べた。700キロカロリーの激痛。しかし、この2日目午後からのハラハラ具合と心配具合。私の場合は脳ではなく心臓が消費している。私の心が。つまり実質0キロカロリー。