プロを目指す子どもたちのピリピリした将棋大会
わが県では、毎年4~8人程度が奨励会を受験する。合格するのは、1~3人くらいだろうか。県代表経験があることは必ずしも必須ではない。小学生大会の県代表を複数回経験している子が受験しなかったこともあるし、一度も代表になったことのないまま奨励会入りする子も何人もいる。
とはいえ、全国大会で上位に入るような子は、やはり奨励会の合格率は高く、小中学生の大会は、プロ棋士を目指す子どもたちと、その親御さんによってピリピリとした雰囲気になる。
運営者が大ポカなんかしたら親御さんに何を言われるか分からない。やり直しを要求されるような事態は絶対に避けなくてはいけない。だから運営者も大会参加者に負けないくらい集中し、組み合わせを間違えたりしないように、かつ決まった時間までに大会を終わらせるように進める。私が一番の集中力を発揮しているのはこの時である。
わが子がお世話になっていた将棋教室の指導者が大会運営に関わっていて、大変そうだったので「手伝いますよ」とつい言ってしまったのが運の尽き。それから12年、その指導者は故人となった。それで、ますます人手不足となってやめられなくなり、私は大会運営者を続けている。
強い子だけ見ていても将棋の裾野は広がらない
大会当日だけ働けばいいわけではない。他の大会との重なりをネットで調べるのはもちろん、日本将棋連盟などに電話してリサーチし、なるべく重ならなそうな日を第一希望、第二希望と選んで、会場の抽選に出向く。
会場が確保できれば、ホームページに大会日時や参加方法をアップする。10年以上前は、週刊将棋という将棋専門紙に掲載してもらうくらいしか広報をしていなかったが、ネットに情報を出すようになってから、参加者は増えて5倍くらいになった。
子ども大会では、代表を争うクラスだけでなく、初心者向けや、中級者向けのクラスも設けている。初心者向けのクラスは入れ替わりが激しく、将棋に飽きてしまったのか1、2回で出なくなる子も多い。
一方代表を決めるクラスは、何年も将棋大会に出続けている常連がほとんどだ。将棋は強い子だけのものではない。強い子のことだけ見ていても将棋の裾野は広がらない。だからこそ、初心者向けのクラスも設け、同じように表彰しているのだけれど、常連となっている強い子のほうを顔も名前も覚えてしまう。