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「監察医 朝顔」「ルパンの娘」……あんなに低迷していたフジのドラマは、なぜ“元気”になったのか

2019/09/30
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 誠実で丁寧なドラマ作りをしつつ、その一方で視聴率を狙う勘所はさすがで、最終回の前の回では、風間俊介演じる夫が事故に巻き込まれ……土砂の中から結婚指輪をした手がのぞくというショッキングなシーンで最終回に引っ張った。1週間もやもやして待った最終回では、冒頭で無事が判明。安心して見ることができた。

 真面目なだけでもなく、エンタメだけでもない、どちらも兼ね備えて見せるスタッフ力。演出は、フジテレビ全盛期の立役者・平野眞と澤田鎌作である。

スタッフの底力を感じた「ルパンの娘」

 同じく、フジテレビスタッフの底力を感じさせたのは、「ルパンの娘」である。

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「ルパンの娘」は人気ミステリー小説を原作にした、泥棒一家の娘(深田恭子)と警察一家の息子(瀬戸康史)の禁断の恋を描いたコメディ。泥棒一家の設定が徹底的にバカバカしく極端に描かれていた。麿赤兒、どんぐり(「カメラを止めるな!」で一躍注目された個性派)、渡部篤郎、小沢真珠、深田恭子、栗原類と濃厚なメンツが家族を成し、タワマンに住んでいて、その中は高価な盗品だらけ。ふだんはそこからつながったフェイクの地味な一軒家に住んでいることにしてある。盗みのときはキャッツ・アイみたいなレオタードに着替えアイマスクして……ととんでもなくアナクロなのだが、それはそれで思考停止してひたすらわはは、と気楽に楽しめた。音楽はウルトラマンみたいで、てんとう虫型のカメラや、乗り物が出てきて……と古き良きアニメや特撮を彷彿とさせるのも昭和世代にはたまらないし、若い世代には新鮮に面白く映ったことだろう。合わせて、ミュージカルファンをも取り込み、大貫勇輔が歌い踊りながら敵を倒す場面が人気を呼んだ。張り巡らされたレーザーを踊りながらかいくぐるシーンは傑作だったし、同じくミュージカル俳優マルシアとの競演、最終回の大階段でのアクションもブラボーで、SNSではトレンド入りを果たした。

深田恭子 ©文藝春秋