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「監察医 朝顔」「ルパンの娘」……あんなに低迷していたフジのドラマは、なぜ“元気”になったのか

2019/09/30
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「ルパン」も「朝顔」も家族で楽しめる

 と、ネタもののようでありながら、それだけでなく、後半になると、深キョンと瀬戸康史の純愛も意外とキュンとするうえ(禁断の恋の原典「ロミオとジュリエット」の偉大さを感じずにはいられない)、ふたりの家族の過去の確執と、意外な大事件が絡んできて……と一本の物語としても楽しめた。古沢良太のオリジナルで映画も大ヒットした、信用詐欺の騙し合い合戦を書いた「コンフィデンスマンJP」などで人気の「逆転もの」の要素を後半に用意しておく周到さ。メイン演出家が大ヒットした映画「翔んで埼玉」や「テルマエ・ロマエ」の武内英樹で、プロデューサーは映画「テルマエ・ロマエ」、連ドラから映画化された「信長協奏曲」などを手がけた稲葉直人で、これまでの成功パターンをふんだんに使用してノリにノッた印象だった。「ルパン」は、「朝顔」と違ってありえないようなセレブ生活を描いているのだが、ここまで嘘っぽく書くと「コンフィデンスマンJP」と同じく、物語として距離をとって楽しめる好例である。

瀬戸康史 ©文藝春秋

 こうして「朝顔」も「ルパン」もまだまだ見たいという気にさえさせ、シリーズ化の可能性を残して終了した。シリーズ化できそうなコンテンツを作ったという点においてもフジテレビとしては成功なのではないだろうか。「ルパン」は映画化の可能性もないこともないだろう。

 この流れを止めないでほしいと願う。「ルパン」も「朝顔」も、老若男女、家族で楽しめることを念頭に置いていたように感じ、家族が一緒に過ごしやすい夏休みに最適だったともいえるだろう。続く10月期はどうか。月9はディーン・フジオカ主演の「シャーロック」。テッパンのシャーロック・ホームズものの舞台を日本に置き換えたもので、謎解きの面白さのみならず、ホームズとワトソン(岩田剛典)のバディものを通り越してブロマンス的要素を突き詰めると化けるかもしれない。佐々木蔵之介がディーンと岩田にどう絡むかも気になる。火曜はかつて大ヒットした「結婚できない男」の13年ぶりの続編「まだ結婚できない男」を阿部寛続投で。これも「結婚できない(しない)男」がますます増えている今、どう捉えられるか。木曜劇場は瀧波ユカリの漫画原作「モトカレマニア」。恋愛ものが人気薄のいま、モトカレ(高良健吾)が忘れられないヒロイン(新木優子)というシチュエーションで風変わりな恋愛ものにも挑む。これがどう出るか。フジテレビの動向をこれからも気にしていきたい。

「監察医 朝顔」「ルパンの娘」……あんなに低迷していたフジのドラマは、なぜ“元気”になったのか

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