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元日本ハムの今浪、鵜久森が語る、石川雅規と武田勝の共通点、相違点とは?

文春野球コラム 日本シリーズ2019

2019/10/26
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「低く、丁寧に」か、「真ん中に、大胆に」か?

現役時代の今浪氏 ©文藝春秋

――昨年の2位から、今年は最下位。原因はどこにあったとお考えですか?

今浪 やっぱり「投手力」ということになりますよね。いや、「投手力」ちゃうな、「防御率」の問題ですね。今はドラフトで公平に選手が獲得できる時代。投手力というのは本来ならそんなに大差がないはずなんです。よく、「神宮は狭いから防御率が悪くなる」って言いますよね。それは確かに事実かもしれない。でも、今日本で一番狭い球場は神宮ではなく横浜スタジアム。その次に、神宮、東京ドーム、ヤフオクドームと続きます。屋外や屋内の違いによる風の影響、フェンスの高さなどは違いますが、安定していい防御率を残すチームもある。「狭いから打たれる、狭いから防御率が悪い」という思い込みは払拭してほしいです。

鵜久森 「狭い球場にはそれに見合ったピッチングを」というのも、ある意味では思い込みなのかもしれないですね。どうしても、神宮の場合は「低く、丁寧に」というピッチングが中心ですけど、札幌ドームの場合は違いましたからね。

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今浪 全員が全員、石川(雅規)さんのようなピッチングができるわけではないですから。神宮は確かに狭いけど、ときには大胆なピッチングも必要かもしれない。日本ハムの投手は、札幌ドームだということもあって、「ストライクゾーンに、大胆に」というピッチングが中心でしたからね。

鵜久森 吉川(光夫)がいい例ですよね。多少のコントロールには目をつぶっても、思い切り投げることで成果が出ましたからね。確かに「投手力」の問題はよく指摘されていますけど、この課題は今に始まったことではないですよね。僕が現役時代に疑問に思ったのは、「みんな、何のためにトレーニングをしているのかな?」っていうことなんです。野球につながるトレーニングなのか、そうじゃないのか? 「このトレーニングは何の役に立つのか?」、その辺りはきちんとみんなが意識してほしいですね。

今浪 日本ハムの例で言えば、武田勝さんというピッチャーがいましたよね。僕は勝さんが大好きなんですけど、彼の平均球速は129キロぐらい。球種はスライダーとチェンジアップのほぼ二種類で、社会人から入団して通算82勝しているんです。僕、後ろを守っているときに聞いたことがあるんです。「球が速くないのに、よく右バッターのインコースに真っすぐを投げられますね」って。

鵜久森 そうしたら、勝さんは何て言ったんですか?

今浪 うるさいよ、今から言うところなんだから……。勝さんはひと言、「オレ、自分で球が遅いと思ったことはないよ」って言うんです。で、「どういうことですか?」って聞いたら、「オレはストレートを投げるときは、自分のことを剛速球ピッチャーだって思って投げているから」って言うんです。この言葉は衝撃的でしたね。実際に、バッターが真っ直ぐに反応すらできずに見逃し三振を喫する場面を何度も見てきました。だから、「低めに、丁寧に」だけではなく、「真ん中に、大胆に」という意識が芽生える。その考え方は、ときにはとても大切になると思いますよ。

鵜久森 そういう考え方も大事なんですよね。平井(諒)、村中(恭兵)、由規にも、この考え方を持ってほしいと思います。彼らの力はハンパないですから。平井はさらに伸びるし、由規は楽天で力を発揮してほしい。村中の去就はまだ決まっていないけど、実力のある男なので、まだまだ頑張ってほしいです。

 ……残念ながら、ここで紙数が尽きてしまった。「今浪・鵜久森対談」、先輩・後輩の両者の話は常にスイングする。先輩は遠慮なくツッコみ、後輩はそれにひるむことなく自分の考えを披露する絶妙のコンビ芸(笑)。今後も引き続き、お届けたい。今回はここまで!

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