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戦争、そして敗戦を経て、じいちゃんは10万円の山を買った。
昭和22年、寅夫じいちゃんが有り金10 万円(今なら400万円相当)をはたいて山を買った。夫婦ふたり血みどろになって山を開墾した。
山の中だけあって、イノシシに荒らされることも多かった。米づくりは雑草との闘いだった。腰が「く」の字に曲がるほど、ばあちゃんは来る日も来る日も草取りに精を出した。
そんな働き者の妻を、じいちゃんは労った。洗濯をして腫れ上がった妻の手をさすり、食べるものがない日は自分の分を妻に分け与えた。お嬢さま育ちだったばあちゃんに、家事も農業もいちから教えたのはじいちゃんだった。その年の暮れ、貧しい暮らしの中で三女の恵子さんを授かった。