石川県・白山市の人々が「あの温泉はすごい場所にあるから」と口を揃える、秘湯中の秘湯がある。白山麓に位置する「岩間温泉 山崎旅館」だ。

 ガードレールのない断崖絶壁の部分も多い難路の先にある、小さな昔ながらの一軒宿。辿り着くまでの難易度が高いだけでなく、雪が積もるため営業は6月から11月までに限定している。

「なぜこんなところに温泉を?」取材をすすめると、とある男性の執念の物語が浮かび上がった。

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 源泉から3.5キロもパイプを引き、6キロ超の道をつけてまで温泉宿を作りたかった男性の人生に迫る前に、まず「山崎旅館」への道のりを見ていただこう。

「落石注意」「路肩注意」の看板に緊張感

 9月某日、「文春オンライン」編集部2名は車を走らせ「山崎旅館」へと向かった。ところどころ立てられている「落石注意」「路肩注意」の看板にさっそく緊張感が高まる。

 つづら折りの道路を進んでいくと、じわじわと高度が上がってくる。道のすぐ脇は断崖絶壁だ。

「岩間温泉」の看板が見えてきたが、この地点でまだ2キロほど。

「どこに連れて行かれるんだ」感がある

 さらに行くと、ガードレールどころか、路肩に何もない道も増えてくる。