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電気も水道もないけれど……残りの人生、山奥で暮らすことを選んだ老夫婦の「円満の秘訣」

『ふたりの桃源郷』プロローグ

2019/10/14

 電気も水道もない山奥で暮らすことを選んだ老夫婦と、ふたりを支える家族の思いを描き異例の大ヒットとなったドキュメンタリー映画「ふたりの桃源郷」。元々は地元のテレビ局が約30年に渡りふたりのもとへ通い、ニュースや情報番組の中で放送し続けてきた伝説のシリーズだった。担当ディレクターが見た『ふたりの桃源郷』。

寅夫じいちゃんとフサコばあちゃんは、電気も水道も通っていない山奥でひっそりと暮らしていた。その山を、僕たちは「ふたりの桃源郷」と呼んだ。 ©山口放送

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 寅夫じいちゃんこと田中寅夫さんは、大正3年、福岡県で生まれた。6人兄弟の長男で、10 歳を過ぎる頃から奉公に出された。フサコばあちゃんこと田中フサコさんは、大正9年、山口県生まれ。家は地主で、自分で髪を洗わないほどお嬢様育ちだった。

じいちゃんとばあちゃんは、とにかく仲がいい。いつもくっついている。(平成のはじめごろ)

 昭和13年に結婚。じいちゃんが24歳、ばあちゃんが18歳のときだ。じいちゃんが働いていた大阪に居を構え、程なく長女の博江さん、次女の悦子さんを授かる。