「怖いなあ、何か既視感があるなあ」と思っていたら、こういうおじさん、今まで勤めた会社で何人か見たことあったんですよ。だいたい50歳前後で、会社内でそこそこの立場にいる男性上司が、新入社員の若い女性にアプローチする姿、そのものだったんですよね。吉田鋼太郎の鬼気迫る演技がそのリアルさをより一層引き立たせていて、思わず恐怖すら覚えてしまったのでした。
さすがに隠し撮りとかキャラ弁はあんまりないだろうけど、己の恋愛感情や下心を抑えきれず、体を触ったり、何かと理由をつけて2人きりになろうとしたり、深夜にプライベートな連絡をしつこくしてきたりする人は、会社を変えようが、堅い仕事であろうが、どこにでもいたわけです。
おじさんだけではなく女性の上司も……
私は女性なので相手がたまたま「おじさん」であるケースが多かったというだけで、男性でも、たとえば女性の上司からこうした性的なアプローチを受けたことがある人はいるだろうし、実際に男性の友人からの相談に乗ったこともあります。「そもそも部長を恋愛対象として見ていなかった」はるたんが、「怖い」「俺はそんなつもりじゃない」と拒絶反応を示すシーンは、コメディ調ではあるものの、作品内で何度も描かれています。
黒澤部長のアプローチを見て「アハハ~怖いな~」と笑い飛ばせる人と「えっ、こわい……」と感じてしまう人の違いは、おそらく、過去にそういう上司に遭遇したことがあるか、ないかの体験の差であって、どちらが正しいとか優れているとか、作品が良いか悪いかみたいな話ではないと思うんです。
ただ、黒澤部長が暴走した結果、大好きなはるたんを困惑させてしまったように、「逆らえない立場にある人に対して私的な感情をぶつけること」の危険性は、人間関係を築く上で、必ず心得ておく必要があるでしょう。
そういう意味で「おっさんずラブ」は、仕事上、誰かの上に立つ人にほど見てほしいし、これ以上ないくらいの「教科書」的ドラマだったんじゃないかなと。