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「おっさんずラブ」に学ぶ、社会的に失敗しない職場での「純愛」

これ以上ないくらいの「教科書」的ドラマだった

2019/10/15

いくら純粋な恋愛感情のつもりでも

 部下に対して抱いているのがたとえどれだけ純粋な恋心だとしても、好意を向けられている本人にとっては「上司」なわけで、会社でこれからも関係が続く以上、気まずくなるのは避けたいし、強く拒絶ができないのです。それを「相手が『嫌』と言ってないから向こうもその気なんだろう」とか、「食事の誘いにも応じてくれるから脈アリだ」と安易に解釈して暴走してしまうのは、あまりにも楽観的すぎるなあと感じます。

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 ニュースでもよく見るような「自分の優位な立場を利用して、相手にセクハラ行為を繰り返した悪い奴」に我々が絶対にならない、という保証はどこにもありません。「好きな人に近づきたい」といった純粋な恋心であろうとなんだろうと、場合によっては相手を困らせてしまう可能性があることを、これからは胸に刻んでおかねばならないと強く思います。

 はるたんの「純粋な上司と部下の関係に戻りたい」というセリフには、ついつい「そうそう、そうなんだよなあ」と首がもげるほど深く頷いてしまったのですが、別に相手のことが嫌いだとかそういうことではなくて、ただ「恋愛対象として見ていない」だけなんですよね。そういう相手にアプローチをかけられても温度感の違いに戸惑ってしまうし、無下にすることもできないし、変な気まずさが生まれるので、非常に居心地が悪くてつらい思いをしてしまう。

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「恋愛対象ではない相手」という意味では、はるたんが牧くん(可愛い)からのアプローチに強く拒否反応を示した根本の部分は同じだし、ただ牧くんが「後輩」だから、黒澤部長に対してよりも、はるたんが自分の正直な気持ちを伝えやすかったというだけで。

「嫌そうじゃないんだけど、脈アリだと思う?」

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 最近、なぜか既婚のおじさんから「会社に可愛い子がいてさあ、食事に行ったこともあるし連絡も取ってるんだけど、脈アリだと思う?」と相談されることが増えました。色々ツッコミどころはあるのですがそれは一旦置いといて、これまでは「誘いを断りづらかったり、連絡を無視しづらいだけの可能性もあるよ」と説明しても、「そうかな~? 全然嫌そうじゃないんだけどなあ」と言われるだけでまったく腑に落ちない様子だったのですが、

「『おっさんずラブ』見ました? 黒澤部長のこと、最初どう思いました?」

「グイグイきて怖かった(即答)」

「でしょ? 今、相手にとってはそういう状態かもしれませんよ」

 という会話を交わすと、すんなり腹落ちしてくれるようになりました。奥さんを大事にしてあげてください。

 何気なく見始めた「おっさんずラブ」が、こんなにも教訓として胸に残るものだとは思いませんでした。職場での甘酸っぱい恋のつもりが、ある日突然「セクハラだ!」と言われてしまわないためにも、恋愛には今まで以上に慎重にならなくてはいけないなと、自戒を込めてこの文章を記します。

「おっさんずラブ」に学ぶ、社会的に失敗しない職場での「純愛」

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