美空ひばりさんの新曲『あれから』がすごく話題になっている。正しくは、NHKスペシャル『AIでよみがえる美空ひばり』で発表された、「AI美空ひばり」さんの新曲だ。でもツイッターの世界では「#美空ひばり」が盛り上がり、トレンド入りしたそうだ。
検索した。賞賛の表現として、「泣いた」と書いている人が多かった。「号泣です」「涙腺崩壊」などなど。「紅白歌合戦出場希望」などのリクエストと並んで「iTunesで売られないかな…」もあった。世代を超えて、感動が広がっている。
私もオンエアを見た1人だ。AI技術の解説がわかりやすく、明かされた美空さんの「歌唱の秘密」に感心した。AI美空さんの声と歌詞が、くたびれ気味の58歳(私です)の心にしみた。「私も歳をとりました……振り向けば幸せな時代でしたね」。現在と過去を肯定してくれる歌だった。さすが秋元康さん。
番組を見ながら、ずっと頭の端っこで考えていたことがある。「山口百恵さんだったら、どうだろう」。
百恵さんは確かに人生を歩んでいるが、新曲は聞けない
百恵さんのファンであると自覚したのは、彼女が1980年に引退してからだ。喪失感と引き換えに知った愛。寂しい。美空さんは、89年に52歳で亡くなっている。ファンの喪失感、寂しさはさぞやだったと思う。それから30年の長い不在。
それにしても、まさか自分が美空さんの年を超えていたとは。番組で享年を知り、驚いた。美空さんは物心ついて以来、ずっと「大御所」だった。その点、百恵さんはデビューの時から知っている。しかも、これは何百回と自慢していることだが、私は2つ年下ではあるが、百恵さんと同じ誕生日なのだ。
引退から3年後に就職して、LP(!)を買いまくった。全楽曲コンプリートのCD集が出た時も、即買いした。長男の三浦祐太朗さんによるカバーアルバムも買い、この夏は三浦百恵さんのキルト作品集『時間の花束 Bouquet du temps』も買った。百恵さんは確かに人生を歩んでいるが、新曲は聞けない。AI美空さんの新曲が出来ていく過程を見ながら、「AI百恵さんの新曲が出たら、私は何を思うかなあ」。そんなことを考えていた。