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「勝ちたいか!」「ついてこられるか?」 ラグビー映画『スクール・ウォーズ』に見る名指導者の条件

「One for All, All for One」だけじゃない

2019/10/14
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「勝ちたいか!」「頑張れるか?」「ついてこられるか?」

 そうかと思えば、試合に負けたときは厳しい顔も覗かせます。高校総合体育大会で112対0というウソみたいな大敗を喫した際には「おまえら悔しくないんかっ!」と部員全員をグーで渾身パンチ。敗北という痛みと悔しさを心にも体にも叩き込むためのパンチだと知って率先して頬を差し出す部員たちの姿、「勝ちたいか!」「頑張れるか?」「(俺に)ついてこられるか?」と吠えながら15人も連続で殴ってさすがにゼーゼーしている山上に思わずジ~ン。

『スクール・ウォーズ』の舞台のモデルとなったのは、伏見工業高校。第77回全国高校ラグビー大会決勝(国学院久我山対伏見工) ©文藝春秋

 しかし部員たちが体罰ではないと思っていても傍から見れば体罰というわけで、1カ月の謹慎を喰らう山上。しかたなく自宅の団地でおとなしくしていると、外からなにやら雄叫びが聞こえてくるではありませんか。「こんな夜にはて?」と窓をガラッと開けると、そこには「カマテ! カマテ! カオラ! カオラ! 学校に出てこんかい!」とラガー服を着てハカを舞う部員たちの姿が。

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 事情を知らない近隣住民にはうるさいだけだし、絵面はとてつもなく異常だし、はっきりいって大迷惑なだけ。そのへんの心配をしない山上が気になりますが、あのパンチが部員たちの“なにか”をスイッチしたと感じて号泣するのです。