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〈いいチームだからこそ、勝てました〉

 帝京大学で4年連続日本一を経験し、2017年にトヨタ自動車ヴェルブリッツに加入した姫野は、社会人1年目から日本代表入りを果たした。それでも母校と距離をとることはなかった。

3人のディフェンスに囲まれる高校時代の姫野(中央) ©清水良枝

「毎年、夏合宿が終わる頃に学校に顔を出しに来てくれて、日本代表やトヨタのウエアを頑張った生徒にいっぱい配ってくれます。中には、姫野の足のサイズ、31センチのスパイクもあって、もらった生徒は大きくて履くわけもいかず飾っているそうです(笑)。数年前の花園の壮行会では、足のケガで試合に出場できなくなってしまった当時のキャプテンを見つけて、姫野は自分のジャージにサインして渡して『最後までがんばれよ』って激励していた。そんな後輩思いの子ですよ」

練習に励む姫野の後輩たち(中部大春日丘高グラウンド) ©文藝春秋

 激闘のスコットランド戦も、恩師は姫野を見つめていた。

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「ディフェンス勝負だと思っていましたが、早い段階で点を取られて……。でも、あの声援が後押ししましたよ。80分間、あの大きな相手にリアクションできるなんて考えられない。きっと、ジャパン全員がこれまで私たちの想像を超える練習を積んできたんだと思います。転んで起き上がる意識の高さ、それを後押しする7万人の声援。姫野はディフェンスとボールの繋ぎに徹していた。ラックですぐにサポートに入って、仕掛けながら外にパスを投げて。要所で強いアタックとジャッカルも素晴らしかった。あいつは高校の時からラグビーの偏差値が高いから、試合中でも余裕があるんですよね。本当に姫野はラグビーが好きなんだと思います」

高校時代からジャッカルは健在 ©清水良枝

 W杯で格上のアイルランド戦に勝利した後、恩師と姫野はこんなメールを交わしていた。

〈いいチームだな〉(宮地監督)

〈ありがとうございます。いいチームだからこそ、勝てました〉(姫野)

母校の昇降口には、姫野の活躍を伝えるポスターが ©文藝春秋

 10月20日行われる決勝リーグ初戦は、世界ランク5位の強豪、南アフリカが相手。グラウンドで満開の桜が再び吹き荒れるのだろうか。