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反対は裁判所に却下され「下流側」堤防は完成した

 いまネット掲示板では「多摩川氾濫は天災ではなく人災だった」という書き込みが続出している。堤防建設反対派住民への非難の声があがっている。「週刊文春デジタル」では”反対派”とされている「二子玉川の環境と安全を考える会」にも話を聞いた。同会の代表を務めていた男性は昨年他界し、副代表の男性が取材に応じた。

「我々は堤防が要らないと主張していたわけではないんです。堤防ができる前、川沿いの土手には桜が咲き誇り、松林も生い茂っていたので、もちろんこの綺麗な景観を守りたいという気持ちがありました。そうした木々を避けて堤防を建設するといった国交省の柔軟な対応を求めていただけなんです。我々が一番に主張していたのは、中洲の樹木の伐採でした。例えるなら血管の中にコレステロールが溜まってしまっているような状態で、自然と水位は上がってしまいます。そうした点を含めて、国交省に対して安全と環境のバランスを保った堤防を作ってほしいと頼んでいました」(副代表の男性)

水が引いた後の「上流側」。仮堤防として土嚢が積まれているのみ ©文藝春秋

 同会は国交省と話し合いを重ねたが、計画は進んでいったという。やむなく2010年1月29日、同会は堤防建設差し止めを東京地裁に申し立てた。当時の新聞でもこんな見出しで報道されている。

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《仮処分申請:多摩川の堤防工事、住民が差し止め求め――世田谷》毎日新聞2010年2月4日付
《堤防建設差し止め 住民ら仮処分申請》読売新聞2010年2月3日付

「結局、申し立ては棄却されてしまい、下流側の堤防は予定通り2010年におおむね出来上がりました。今回の冠水の原因となった上流側の氾濫箇所は、我々の運動が問題としている区間とは違う。我々は上流側の堤防には関与していないのです」(副代表の男性)