舛添 (前略)参考になるのが2007年の「西松建設裁判」です。これは中国人の元徴用工が、過去の強制労働について損害賠償請求をおこしたものです。ただ、1972年の日中共同声明で中国は「中国政府は両国の友好のために戦争賠償請求権を放棄する」と明言していた。そのため最高裁は請求については棄却したものの、強制連行の事実や、元徴用工が精神的・肉体的な苦痛を受けていたという事実は認めました。それを受けて2009年10月23日に和解が成立。西松建設が被害者に謝罪し、2億5000万円を補償などのために社団法人に寄託しています。
橋下 当時、最高裁は「和解的条約があっても被害国民の個人的請求権は消滅しないし、時効消滅もしない。ただし民事裁判では権利を実行できないので、裁判外において被害国民を救済するように関係当事者は努力すべき」という判決を出していますね。つまり個人の請求権の存在については認めるけれども、民事裁判での実行は不可能というのが日本の司法の論理です。
日本が賠償金を支払う必要はないのか?
「個人の請求権は消滅しない」という考え方は日韓で一致している。ではその請求権が認められた場合、誰が賠償金を支払うべきなのか――。
ここで両者の主張は初めて分かれた。
橋下氏は「あくまで日本側は賠償金を支払う必要はない」と主張するが、舛添氏は「日韓で痛み分けができないか」と妥協点を探っていくことになる。
橋下氏・舛添氏による対談「徹底討論 対立か協調か」全文は、「文藝春秋」11月号に掲載されている。