ラグビー日本代表の熱き戦いが終わった。世界ランキング6位の日本(A組1位)は、同6位の南アフリカ(B組2位)に3-26で敗れ、準々決勝で敗退した。
「ワンチーム」をスローガンに初の決勝トーナメント進出を決め、旋風を巻き起こした1カ月。チームは、16人の日本人選手と6カ国15人の外国出身選手によって構成された。日本代表が“多文化共生”を成功させた秘訣はどこにあるのか――。
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外国出身選手が感じる「日本代表」の誇り
「基本的にラグビーは、民族や国籍を意識しない伝統がある。あらゆる人種の選手が世界中でプレーし、その国の代表になることを望んでいます」
そう解説するのはラグビージャーナリストの村上晃一氏。外国籍のままの選手でも、〈両親または祖父母のうち1人が日本出身〉、あるいは〈日本に3年以上継続して居住している〉などの条件を満たしていれば、日本代表として試合に出場することが出来る。
最も多い出身国は、トンガとニュージーランド(NZ)の5人ずつ。
「トンガの選手からすると、世界のどこかのチームでプレーして、さらにその国の代表に選ばれるというのは、すごいサクセスストーリーなのです。1980年代からそういう選手たちが日本代表に入ってきた歴史がある。今の代表にいる外国出身選手の多くは、長く日本で暮らし、学校やクラブチームにそれぞれの仲間やコーチがいて、自分はその代表として選ばれているという意識がある。だから、日本の文化や歴史についてもしっかり勉強するんです」(同前)
チームスローガンは「ワンチーム」
だが、中には日本生活が浅く、“言葉の壁”にぶちあたる選手もいる。
「チーム内の共通語は日本語です。通訳もいますが、コミュニケーションを円滑にするため、日本通の外国出身選手たちも活躍している。例えばNZ出身のレメキ・ロマノ・ラヴァ(30)はトンガ語、英語、日本語の3カ国語を操れ、性格も陽気でチームの潤滑油的存在。サモア出身のラファエレ・ティモシー(28)も合宿ではリーダーグループの一員となったり、チーム内で通訳のような役割を担うこともある」(チーム関係者)
またチーム内では、「ワンチーム」というスローガンのもと、様々な仕掛けが施されている。
「合宿所には“カツモト”と呼ばれる赤い甲冑を置いている。映画『ラストサムライ』で渡辺謙が演じた勝元盛次にちなんだもので、外国出身選手たちにも戦いの象徴として受け入れられました。2月の合宿では主将のリーチ・マイケル(31)が『チーム文化、チーム愛が深まるから』と主導して勝利の歌を制作。『カントリー・ロード』の替え歌で『ビクトリー・ロード』と名付けられ、W杯でも控え室で歌われています」(同前)