ラグビー日本代表が歴史を変えた瞬間――トンプソンルークは、いつも身体を張り続けていた。
10月20日、はじめてW杯の決勝トーナメントに進んだ日本代表は、南アフリカ代表と激突。3-26で敗れた。
タックル、そしてタックル……。トンプソンは、いつもと変わらぬプレーで、チームの危機を救い、仲間を鼓舞し続けていた。
W杯開幕時に世界ランキング1位だったアイルランドを破った初戦でも、トンプソンは19回中、19回タックルを成功させた。決勝トーナメント初進出をかけたスコットランド戦でも、チーム最多となる18回のタックルでピンチを幾度となく救った。
前回W杯「ブライトンの奇跡」での“絶叫”
前回W杯で南アフリカを破った「ブライトンの奇跡」もそうだ。3点ビハインドでむかえたロスタイム。最後のスクラムを組む直前、トンプソンが絶叫する。
「歴史を変えるのは誰!?」
その叫びに奮い立ったフィフティーンは一丸となって、劇的な逆転トライを奪う。
あの絶叫にどんな思いを込めたのか。
トンプソン自身に聞いた経験がある。しかし彼は苦笑いをして、おなじみの関西弁で意外な答えを口にした。
「私は、めっちゃ興奮していましたね。だからあまり覚えていない。でも、エディ(エディ・ジョーンズ前日本代表ヘッドコーチ)の練習はめっちゃキツかった。勝つことが一番大事なことです。私は仲間を信じていた。だから完璧な試合をして、ロスタイムのチャンスでもトライをとれたんですね」