「年賀はがきのノルマです。あからさまな成績至上主義があったわけではありませんが、『○枚販売せよ』と目標を課していたため、達成できなかった局員は、自分の持分を数千枚単位で金券ショップに持ち込んでいました」
当時、全国各地で格安の年賀はがきが売られていたことから発覚し、新聞で大きく報道されるなど批判を浴びた。生田氏は即座に対応を指示したという。
「局員にとって大きな痛みであるばかりか、公社にとって不利益となると判断し、局員にノルマを課すことを禁じました。ノルマはモラルの低下にもつながってしまう。このときの教訓が生きていれば、不正販売は起こらなかったはずです」
2000億円以上の損失になる恐れも
生田氏はかんぽの不正は「日本国民全員にかかわることだ」と指摘する。
「日本郵政は、政府が57%の株式を保有する『国民の財産』だからです。不祥事が起これば株価は下がり、国民の財産は棄損される」
いま政府は東日本大震災の復興財源に充てるため、年内に郵政株を売却することを計画している。1兆2000億円の売却益を得ることを目標としているが、そのためには株価が1130円を超えなければならない。ところが、不正が発覚して以来日本郵政の株価は下落を続け、1000円を割り込むこともある。
「売却益は1兆円を下回り、2000億円以上も国民の財産が失われてしまう恐れがある。他人事ではありません」
発売中の「文藝春秋」10月号「日本郵政に『経営者』はいない」では、生田氏が日本郵政公社の総裁を務めた時代の取り組みや経営者のあるべき姿について、自らの経営体験を交えつつ、熱く語っている。
【文藝春秋 目次】<総力特集>日韓断絶 藤原正彦 佐藤 優/<特別寄稿>村上春樹 「至るところにある妄想」/<特集>がん医療の新常識
2019年10月号
2019年9月10日 発売
定価960円(税込)