最近ある会合でいくつかの大学の先生たちと話をする機会があった。大学生は昔に比べるとはるかに勉強するようになったとはよく聞く話だ。今の中年以上の世代では大学は「レジャーランド」と呼ばれ、ほとんど大学には通わずにアルバイトに励んだり、サークル活動に精を出すといったふしだらな生活を送る学生が多かった。

 そこで最近の学生の真面目な生態を教えてもらおうと話題を向けると、何人かの先生から異口同音に意外な答えが返ってきた。

「そうですね。授業にはよく出てきます。真面目といえば真面目かもしれませんが、昔の学生よりできるか、といえば微妙ですねえ」

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学生に「不可」をつけられない先生たち

 私たちの時代には授業に出ないかわりに、試験前には真面目に出席している学生のノートをコピーし、担当教授の過去の問題を検索し、傾向と対策をしっかりと練り上げて試験を受け、何とか切り抜けたものだが、今の学生の成績は「微妙」なのだろうか。

 するとある先生が驚くべき発言をした。

「最近は成績をつける際に『不可』をつけられないのですよ」

 学生は「不可」をつけられると単位が取得できないので、無事に卒業するためには「可」以上を取らなくてはならない。厳しい先生や自分の理解力が足りない場合には「不可」をつけられても仕方がないのだが、それでも「不可」はご法度だという。

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「最近は親が抗議にくるのですよ」

 理由を尋ねると、「成績に対して納得できない学生が抗議にくるのならよいのですが、最近は親が抗議にくるのですよ。なぜ不可なのかいくら説明しても納得してくれない」と困惑顔で言う。

 さらに、「大学側も親が抗議にくると面倒くさいので、できれば『不可』はつけないでやってくれ、と言ってきます。また、そうした学生をいつまでも大学に残しておくとトラブルを起こして面倒なので早く卒業させたい、とまで言ってくるのです」。

 少子化がすすむ世の中、大学にとって学生は大切なお客様。親ともども機嫌を損ねてSNSなどで悪評を流されたり、いつまでも大学に置いておいてそれを拡散でもされたらたまらない、というのが心情のようだ。