ジェニファー・ヘイリー作で、瀬戸山美咲の上演台本・演出によるQuaras「THE NETHER(ネザー)」が公演中だ(東京公演10月11日~11月2日、大阪公演11月7日~10日)。
尋問が続く捜査官役は台詞の力が勝負どころとなる
この中で、北山宏光が仮想空間における犯罪を取り締まる捜査官モリスを好演している。芝居の殆どは捜査官が容疑者を追及していく取調室の場面だ。容疑者は「ネザー」と呼ばれる仮想空間を運営するシムズ(平田満)と中学校教師であった顧客ドイル(中村梅雀)の2人。
北山は、これらのヴェテラン俳優を相手に互角にやり合い、ジワジワと犯罪者を追い詰めていく。この緊張空間は大したものだ。別の捜査官ウッドナット(シライケイタ)が仮想空間に送られて証拠を固める。北山にとって「あんちゃん」以来2年振りの舞台だが、その発声は明晰であり、爽やかな雰囲気の中、犯罪の全容をあぶり出した。尋問が続くこの作品では、役者の台詞の力が勝負どころとなり、北山はこれに成功を収めた。
劇場の雰囲気は通常とは異なり、明らかにジャニーズ・ファンと思われる女性客で溢れている。北山なる人物を全く知らなかったのだが、ユーチューブで検索すると、「サクラヒラリ」とか「Tonight」などのタイトルの曲があり、「真っ赤に彩色(いろ)づいて、高鳴って、君に会いたくて」と甘い声で歌っている。踊って歌う「キスマイ」(Kis-My-Ft2)という名のグループの主要メンバーである。この人物が、平田満や中村梅雀の演じる人物たちに尋問し、物語を展開させていく力のあることに驚いた。微妙で複雑、かつ心理的で創造力を要する役柄を見事に演じている。