1ページ目から読む
2/2ページ目

作ってみよう、ワニしゃぶしゃぶ

 以来、冬の鍋の季節になるとワニしゃぶが食べたくなる。しかし、そのへんの肉屋ではまず売ってないので、ワニしゃぶの日どりを決めたら、ネットでワニを注文するところから始まる。ほとんどがオーストラリア産のもので、残念ながら静岡の国産ワニは頭数が少なく、一般には出回っていない。

簡単に購入できるオーストラリア産ワニ。ワニしゃぶには尻尾を使おう

 手羽や背中の肉など、いろいろ部位を選べるが、ワニしゃぶに適しているのは小骨のないシッポ(テール)だ。1キロで5000円前後、クール宅急便や消費税もプラスされると6500円くらい。まだまだ高いがワニが一般の家庭でどんどん食べられるようになれば、もっと値段は下がるだろう。

 さて当日、ワニしゃぶ会にやってきたのは6人の男女。みな爬虫類を切るのも食べるのも人生で初めてだという。コートをぬぎ、いそいそと石鹸で手を洗い、ワニの前に集合。

ADVERTISEMENT

表面は、ヌメっとする 

 ワニの絵が描かれた袋にドキドキするらしく、スマホで撮影タイム。肉の匂いをくんくん嗅いでみる人もいる。肉を切る前にキッチンペーパーでよくぬめりをとったほうがいい。繊維にそってできる限り薄く、薄く切ろう。

「おお、これがワニのシッポか!」とはしゃぐも、恐る恐る包丁を手にした男子が「うう、見かけは鶏肉のようだけど、やっぱり爬虫類なんだろうか? 硬くてヌメヌメするんだけど~」と訴える。切りづらくなったら、こまめに包丁を拭くといいかもしれない。

薄く、そぐように切りましょう

 昆布で出汁をとった鍋に、すったショウガをひとかけ、ネギを少々いれてひと煮立ちさせる。これで爬虫類臭さがだいぶ消えるのだ。

 さあ、いよいよ、しゃぶしゃぶ。爬虫類だものね、よーく煮ないと!と思わずに、色が白く変わったら硬くなる前にすぐに引き上げてほしい。すったショウガとニンニクを多めに入れた醤油にちょっとつけるのが一番、合うと思うのだけれど、ワニ本来の味を楽しみたい人は塩で食べてもいい。

さっとお湯にくぐらすのがコツ

「切ると硬いのに、なぜか柔らかい!」「魚の白身と鶏肉の間くらいの味!」「脂がすっと口のなかで溶ける!」とおおむね好評。ワニ出汁が出たら、豆腐や野菜を入れ、〆にはワニうどんを作ろう。

臭みがぬけたワニは、ぽんずに合う

  ワニを食べた連帯感なのか、知らない人同士でも話題がはずむ。今夜は爬虫類でお腹がいっぱい。そろそろ、日本の食卓や居酒屋でもそんなつぶやきが聞こえてもいいと思うのだ。

世界のへんな肉

白石 あづさ(著)

新潮社
2016年10月31日 発売

購入する