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4年前の観戦時と根本的に違ったことがあるとすれば……

 そんなジャパンの4年間であり、この8年間だったのである。

 はたしてエディー・ジョーンズ氏の言葉の正しさは今年、これ以上ない形で立証された。「世界に勝つ」ジャパンは、もはや日本のみならず世界の人々さえも魅了してしまったことは周知の通りだ。

今大会のジャパンは、世界中のラグビーファンを魅了した ©JMPA

 10月20日の夜、東京スタジアムの観客席で南アフリカ戦を観た。4年前にブライトンに集った何十倍だろうか、スタジアムの大半を埋め尽くした日本人が、試合前の国歌斉唱の荘厳な響きに立ったまま武者震いし、スクリーンに映し出された流大選手の涙にもらい泣きしていた。

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 相手は同じ南アフリカである。しかし4年前の観戦時と根本的に違ったことがあるとすれば、それは大げさに言えば、自分が「誇り」という感情を他者と共有しているという感覚だったかもしれない。「誇り」という言葉の意味が生まれて初めて理解できた、そんな大人すらいるかもしれない。白状すれば、私はそうだった。私はこの日ほど大きく高らかに歌われる「君が代」を、今まで聞いたことがなかった。

次は私たちの番だ

「不可能なんてない。信じれば必ず結果が出ることを目の当たりにしてきました」

 試合後、エディー・ジョーンズ、ジェイミー・ジョセフと2代のHCの下で働いてきた日本代表通訳の佐藤秀典さんが話していた。

南ア戦の国歌斉唱で流大の頬を涙が伝った ©getty

 これが漫画や映画ではなく、現実に起こったということの偉大さを、今改めて思う。

 同時に、これほど大きく人の心を揺さぶるスポーツというものの価値を考える。

「まだまだ人生、捨てたもんじゃないな」

 そうパスを受け取ったと捉える人がいるとすれば、それもまたラグビー日本代表が私たちにもたらしてくれた大きな社会的財産なのだろうと思う。

 次は私たちの番だ。

 ありがとう、ジャパン。