1ページ目から読む
3/3ページ目

「カネのかからない五輪」とは何だったのか

 そもそも世界的な建築家であったザハさんの建築案が白紙に返って、本来は冷暖房完備だったはずの国立競技場を設計し直す話になったあたりからケチがついていたと思うんですよね。誰だよ、この設計では建たないとかいうガセネタ流したのは。亡くなったザハさん、可哀想だろ。対応に追われた設計会社の皆さんや突貫工事を余儀なくされた土木系各社の方々も、繰り返しになりますが上が馬鹿だと現場が苦労するんですよ。

 猪瀬直樹さんが誘致の際、2012年に「カネのかからない五輪」と言い放ち、そこからいまに至るまで予算の増額に増額を重ね、それでも足りないから予算を国と大会組織委員会と東京都で押し付け合い、東京都民は赤紙よろしくボランティアでかき集められ、これほんとどうするんですかね。

 

ADVERTISEMENT

 こんな自分たちの東京都民の間抜けさを晒す祭典になるぐらいなら、いっそ東京オリンピック自体を「東京できちんと開催できないなら返上します」ぐらいのことを言って、それなりに筋を通していったらどうでしょうか。炎天下に競技などできない、アスリートも死にかねない状況で、この日程、この仕切りで本当に可能なのか改めて考えて欲しいのですよ。

 それに、後から聞いたんですけど今回のマラソンとかの札幌開催は小池百合子さんを蚊帳の外にして森喜朗さんほかみんなが勝手に了承しちゃってたって話らしいじゃないですか。いくら小池百合子さんがアレでも一応は東京都の代表なんだから、どう考えても彼女はアレだとしても東京都民を外して決めたも同然じゃないですかね。こんなの筋が通るんでしょうか。

おい、この状況をどうにかしてくれ

 何より、1964年の前回の東京オリンピックから半世紀経って、日本の国威を示すべき一大イベントでこの有り様って、日本は衰退しつつあるのだと世界に発信したいのかというぐらいに調整の効かない、日本人や東京都民の言い分も通らない、実に残念な状況だけが世界に良く知られてしまうという不思議な結末になっているのが残念です。

 そして、そういう不始末ばかり起こしているイベントの、高額な請求書が回ってきて泣きながらおカネを出すのは東京都民であります。どうしてこうなった。「こんなはずではなかったのに、どういうことなんだ猪瀬直樹」ってカバンに5000万円詰めながら朝から晩まで野次り続けたい。おのれ小池百合子め、おのれの思い付きで周囲をぶんぶん振り回した挙句に調整不足で札幌オリンピックになるのはおのれのせいだからな。そういう吐いたつばは、そういう人間を都知事に選んでしまった東京都民が全量を飲み干すことになるわけであります。ちくしょう。ちくしょうめ。

小池百合子都知事 ©JMPA

 おい、この状況をどうにかしてくれる、ちょっとはまともな人間はいねえのか。

 太平洋戦争も、国民はそう思いながら敗戦を迎えたんですかねえ。

INFORMATION

 ついにこの日が来てしまった……。文春オンラインの謎連載、特にタイトルがあるわけでもない山本一郎の痛快ビジネス記事が待望の単行本化! 現在、Kindle Unlimitedでも読めます。

2019年5月15日発売!!

 その名も『ズレずに生き抜く 仕事も結婚も人生も、パフォーマンスを上げる自己改革』。結婚し、出産に感動するのもつかの間、エクストリーム育児と父父母母介護の修羅を生き抜く著者が贈る、珠玉の特選記事集。どうかご期待ください。