「5、4、3、2、1」そして目の前で魔法が起きた
2年前の2017年11月11日を振り返ってみたい。当時アリババ最高戦略責任者だった私は、前日の深夜、コマンドルームで待機していた。ずらりと並んだコンピュータ画面には数字が点滅し、トレンドラインが描かれ、ネットワーク速度や反応度が評価される。
中国全土はもちろん、世界中のユーザーの指がスマホ画面の上で待機している。午前0時が近づくと、カウントダウンがはじまった(もちろん、中国全土でテレビが生中継している)。
「5、4、3、2、1」
そして、私の目の前で魔法が起きた。
・わずか11秒で1億元(1500万ドル)を売り上げた
・7分23秒経ったところで処理された取引された件数は1億件へ
・午前0時のセール開始からわずか12分後に最初の荷物が上海の消費者の自宅に届いた。
・午前4時までにカナダ産エビ300万匹アルゼンチン産のクルマエビ160万匹が注文された。
・午前9時までには粉ミルク5000トン使い捨てオムツ10億枚が売れた。
(衣料品、家庭用品、電子機器、宝飾品など、ありとあらゆるものが売れた)
・この日に出荷した荷物を全て並べてみたら地球1200周ほどになった。
・すベてを積み込むにはボーイング747型機が8万機以上も必要。
・荷物の総移動距離数は6276億4416万キロメートル(地球と冥王星のあいだを40往復以上する計算となる)
いくら「ひらけ、ゴマ」といっても、ここまでくると想像を絶する。圧倒的なスピード感のもと、巨大スケールのネット通販が可能なのは、なぜか。アリババ全社員がこの日に向けて、何カ月もかけて懸命に準備を進めてきたからだ。ITシステムからフロントエンドのウェブサイト、決済システム、在庫管理から物流に到るまで、である。