中国の巨大IT企業「アリババ」の創業者、ジャック・マーの右腕であり、前最高戦略責任者のミン・ゾンが、そのビジネス戦略をすべて明かした書籍「アリババ 世界最強のスマートビジネス」を出版した。ジャック・マーが自ら執筆した「序文 デジタルエコノミーに足を踏み入れるみなさんへ」を特別に公開する。
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進歩を遂げながら中国に貢献してきたアリババ
1995年、私は旅先のアメリカで初めてインターネットと出会った。「中国のビール」と検索してみると、まともな情報はゼロ。それを見て、帰国したら起業しようと決めた。中国にインターネットを、そして世界に中国を届けるために。当時中国にはネット企業は一つもなかった。それが今では、インターネットはどこでも使える。信じられないような進歩だ。
アリババも同じような進歩を遂げてきた。1999年に私の小さなアパートで働いていたのは18人。インターネットという新たな技術を使って、中国のお粗末な商取引のあり方を変えていこうという夢に溢れていた。今日、アリババは世界中の数億人の消費者と、数百万社の企業にサービスを提供している。他の企業がより良いビジネスをできるようにサポートすることを通じて、私たちは成長してきた。中国の状況は一変し、そこにおいてアリババも及ばずながら貢献してきたと思う。
2036年までに20億人の顧客にサービスを提供、1億人の雇用を創出
産業は社会の進歩を推進する。アリババは世界中のあらゆるところで円滑な事業活動をサポートするため、独自のビジネスモデルを発展させてきた。設立当初から単純なB2C(消費者向けサービス)企業ではなかった。アリババは何百万社ものプレーヤーから成るビジネス・エコシステムである。そこには出店者からソフトウエア・サービス・プロバイダー、さらには物流パートナーも含まれている。今日インターネットは数十億の人々が抱える問題の解決に寄与しており、私たちが1999年に抱いていた夢は現実になろうとしている。
しかし、これはほんのはじまりに過ぎない。2036年までにアリババは20億人の顧客にサービスを提供し、1億人の雇用を創出し、1000万社がオンラインとオフラインの商取引を結びつけて収益力のある事業を営むのを支援し、世界第五位の経済圏になろうとしている。目標はeコマースをグローバル化し、世界中の小規模事業者や若者たちがグローバルに商取引をできるようにすることだ。私自身はインターネット上で事業を営むことが当たり前になり、「eコマース」という言葉自体がなくなると考えている。eコマースは世界中の人々を結びつけ、新たな力を与えるという意味で、通常のコマース(商取引)となんら変わりはない。