文春オンライン

「偉大な起業家は本来楽観的なものだ」アリババ創業者ジャック・マーが語った夢と課題

note

本書が読者のみなさんにとっての貴重な手引きに

 第1次と第2次産業革命の後、支配的なプレーヤーとなったのは工場と企業だった。今日の経済で支配的地位にあるのはプラットフォームとビジネス・エコシステムだ。両者はデジタルエコノミーの、そしてグローバル社会の進歩を牽引していくだろう。プラットフォームとビジネス・エコシステムは、世界中のふつうの人々が経済に参加し、成功する手段を提供する。

 ミン・ゾンは2006年、「総参謀長」としてアリババに入社した。総参謀長は軍事用語で参謀本部の長や戦略アドバイザーを意味する言葉だ。以来、私たちは緊密に協力してきた。最初にアリババに来てほしいと誘ったとき、私はこう約束した。アリババはいずれあなたが書きたいと思うような、最高におもしろいケーススタディになるから、と。

 まさにそのとおりになった。ゾン博士はアリババに関する豊かな知識と学者としての揺るぎない識見に基づき、すばらしい洞察に満ちた本を書き上げた。本書には設立以来のアリババの歩みが描かれている。それ以上に重要なのは、アリババが先鞭をつけた新たな戦略的枠組みと、それが今後の世界においてどのような意味を持つかを示していることだ。理論的厳格さと実務への適用可能性を兼ね備えた良書である。読者のみなさんが新たなデジタルエコノミーに足を踏み入れるうえで、貴重な手引きとなるだろう。

ADVERTISEMENT

ジャック・マー氏 ©AFLO

「今日は苦しい。明日はもっと苦しい。だが明後日はすばらしい日になる」

 1999年の私たちにはチャンスしか見えなかった。今見えているのは課題である。世界には私たちが解決すべき課題が山のようにある。だが私は将来を楽観している。みなさんにもそうであってほしい。偉大な起業家は本来楽観的なものだ。自分にはどんな問題を解決できるだろう、このおもしろい問題にはもっと良い解決策はないのか、と考える。新たなデータ・テクノロジーとスマートビジネスの時代において、私たちは自ら事を成すだけでなく、他の人々にそのような力を与えなければならない。そうすることを通じて、世界をより良い場所にしていくのだ。ゾン博士の本とアリババの歩みは、その方法を示している。

 デジタルエコノミーは全人類が力を合わせて創りあげる、すばらしい未来の一部を成す。この重要な進歩のプロセスに、アリババが貢献できたことがとても嬉しい。だがやるべきことはまだたくさん残っている。理想と野心を抱き、自己満足に陥らないようにしよう。私がよく口にする言葉がある。「今日は苦しい。明日はもっと苦しい。だが明後日はすばらしい日になる」。みなさんが創りあげるすばらしい世界を心待ちにしている。

◆◆◆

ジャック・マー 1964年生まれ。中国・浙江省杭州生まれ。大学受験に3回失敗したのち、杭州師範学院英語科へ入学。英語教師を経て渡米、現地でネットに出会う。1999年、杭州にてアリババを創業。eコマースをはじめ物流・金融・クラウドなどにも進出、世界的なIT企業へと導く。今年9月、55歳の誕生日にアリババ会長を退任。

アリババ 世界最強のスマートビジネス

ミン・ゾン

文藝春秋

2019年10月30日 発売

「偉大な起業家は本来楽観的なものだ」アリババ創業者ジャック・マーが語った夢と課題

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー