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多くのクリニックが堂々とネット広告を出している

 もちろん、こうした問題のある医療行為の横行を黙ってみている医師ばかりではありません。今回の血液クレンジング騒動でも「トンデモ医療ハンター」とも呼べるような医師の方々が、血液クレンジングを行っている医師を非難し、専門職能集団たる医師の責任についても言及していました。しかし、それが医学・医療界全体の責任問題にまで広がっていないことが問題だと私は思うのです。

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 たとえば、冒頭にあげた「免疫細胞療法」は、6回程度を1クールとする治療を受けると全額自己負担で300万円前後の治療費がかかります。活性化自己リンパ球療法や樹状細胞療法、がんワクチン療法などは、大学病院やがんセンターなどでも研究されてきました。しかし、目立った成果を上げることができず、今のところ保険適用とはなっていません。にもかかわらず、多くのクリニックが堂々とネット広告を出しており、患者集めのセミナーなども開催され、現在もたくさんのがん患者が治療を受けています。

医師が法的なペナルティを受けることはほとんどない

 科学的に効果が証明された「標準治療」を基準とする治療を行っている、まともながん専門医に取材すると、こうした効果が証明されていない治療を行って、藁にも縋る思いでいる患者や家族から多額のお金を取るのは問題だと眉を顰める人が少なくありません。実際にがん専門医から構成される日本臨床腫瘍学会は、今年5月30日にがん免疫療法に関して、一般市民に注意喚起する文書を公表しています。

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 こうした取り組みがされたことは、大いに評価すべきだと思います。しかし、これくらいの注意喚起では、なかなか一般市民に広まらないでしょう。なによりがん免疫療法をはじめ非証明治療を行っている自由診療クリニックには、ほとんど影響がなかったはずです。

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 なぜ、医療界全体でもっと大きな声にできないのでしょうか。それは医師に認められている医療行為の裁量権が大きく、いかにエビデンスのないトンデモ医療だと批判されようと、患者に傷害を負わせたり、明らかな詐欺を行ったりしない限り、法的にペナルティを受けることがほとんどないからです。