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特集移動編集部

「好きすぎて気象庁を辞めました」日本でただ一人“蜃気楼だけを追いかける”33歳男性の話

「好きすぎて気象庁を辞めました」日本でただ一人“蜃気楼だけを追いかける”33歳男性の話

魚津埋没林博物館学芸員・佐藤真樹さんインタビュー in “魚津のおしゃれすぎるカフェ”

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全国で増え続ける“蜃気楼ウォッチャー”

――ちなみに観測は佐藤さんが双眼鏡か何かでずっと観察しているんですか?

佐藤 さすがに付きっきりで観測しているわけにもいかないので、3か所に設置したカメラの映像で観測しています。

 ただ、この映像はYouTubeでもリアルタイムで流していて(魚津市役所公式チャンネル「富山方面・しんきろうカメラ」)、ずっと見ている方もいらっしゃるんです。僕がちょっと見逃していると「あれは蜃気楼じゃないんですか?!」とコメントが入ったり。

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――全国に“蜃気楼ウォッチャー”が……。

佐藤 そうなんです。観測回数が増えた理由のもう1つに、魚津内外で蜃気楼を観ている“蜃気楼ウォッチャー”が増えたこともあったりします。魚津の方でも博物館に電話で「いま蜃気楼出てるけど大丈夫!?」と知らせてくださる。それで慌てて外に観測に出かけることもしばしばあります。バタバタですね(笑)。

 

ここまで蜃気楼が認識されている場所は他にはない

――そういえば魚津港の海岸線にも「蜃気楼の見える街」と大きく書かれていました。佐藤さんだけではなく、魚津の皆さんも蜃気楼の沼にハマっています。

佐藤 言ってしまうと、蜃気楼が見える場所は魚津だけじゃないんです。他にも全国で見られるんですが、ここまで蜃気楼が認識されている場所が他にはないということなんです。蜃気楼ウォッチャーで毎日見ている人、蜃気楼という現象を知っている人の多さは他を探しても魚津ほどの場所はないと思います。

魚津で蜃気楼を見る人々 佐藤さん提供
「蜃気楼の見える街 魚津」と書かれた「しんきろうロード」の風景

 あとは歴史的背景もあります。加賀百万石、前田のお殿様が魚津で蜃気楼を見て、お付きの絵師に絵を描かせている記録が残っています。それが蜃気楼観測の最古なんです。実は琵琶湖にも同じくらい古い記録が残っていますが、なかなか今は蜃気楼を見ている方が少ない。

 最近は、他の地域でも蜃気楼の調査が進んできていて、各地から蜃気楼の写真を添えて「この蜃気楼どうですか?」とメールが頻繁に送られて……。

――蜃気楼の感想を送り合っているんですか?

佐藤 先日は千葉県の九十九里から「こちらは蜃気楼ベストシーズンとなりました」と素敵な写真とともに連絡がきましたよ。