「ARコスメ」と「ライブコマース」に乗り遅れるな
ただし、ポイントは数字だけではない。ダブルイレブンは新たなビジネスモデルや技術が登場するお披露目の場でもある。「ダブルイレブンで未来が予見できる」とはアリババグループ系のフィンテック企業アントフィナンシャルの蒋国飛副総裁の言葉。このお祭りで登場した、尖った技術がしばらくして普及するという意味だ。
今年の目玉技術の一つとされているのが「ARコスメ」。口紅などの化粧品をAR技術でお試しできるという代物だ。筆者もトライしてみたが、かなり自然に化粧が試せる印象だ。実は似たような製品を前にも試したことがある。それは2017年のダブルイレブンの時だった。ただし、2年前はスマホではなくお店に備え付けられた専用の機械を使っていた。専用機が必要だった技術がたった2年間でスマホの中に格納されたというわけだ。しかもARの精度や効果が現れるまでの速度も大きく向上している。
ロシア人インフルエンサーが活躍
もう一つの目玉とされているのが「ライブコマース」だ。テレビ通販のアプリ版のようなものだが、インタラクティブという点が大きな違いだ。視聴者がコメントを書き込むと画面上に表示される。放送者は視聴者の反応で手応えを感じながら、時にはコメントにライブで回答して放送を進めていく。
もちろんライブコマースは今年始まったわけではない。アリババグループが採用したのは2016年。今年は4年目になるが、今までをはるかに超えた力の入れようを見せていた。「ライブコマースは視聴者とのエンゲージメントが強く、一般のネットショッピングと比べても高い成約率となります」と関係者はその理由を説明している。
また新しい動きとして、海外を対象としたライブコマースも目立った。中国商品の輸出を手がけるアリエクスプレスではロシア人インフルエンサーなどを招き、外国語のライブコマースを行っている。日本からの購入も少なくないだけに、来年は日本人インフルエンサーが起用される展開は十分ありうる。「ヒカキンがアリババ本社から中国製品を宣伝する」といった未来があっても不思議ではない。
他にもアリババ傘下の、東南アジアのECサイト「LAZADA」がタイ向けのライブコマースを行っていた。タイ人インフルエンサーがタイの伝統食品をタイの消費者に売る……ただし収録ブースは中国。というなんとも奇妙な状況が生まれていた。