宅配の「紙」の新聞だけが特別扱い
「報道・言論により民主主義を支え、国民に知識・教養を広く伝える公共財としての新聞の役割が認められたと受け止めています」
日本新聞協会は10月1日からの消費増税に際して、新聞が軽減税率の対象になったことについて、こんな声明を発表した。大上段に振りかぶったモノ言いだが、なぜ食料品と並んで新聞だけが軽減税率の対象になったのだろうか。「知識・教養を広く伝える公共財」と言うのならば、書籍や雑誌などはなぜ対象にならないのか。
しかも、今回対象になるのは「週2回以上発行される新聞の定期購読」。駅やコンビニでの1部売りや、電子版は軽減税率が適用されず、増税対象になった。つまり、宅配の「紙」の新聞だけが特別扱いされたのである。
新聞協会の声明はこう続く。
「民主主義の主役である国民が正しい判断を下すには、信頼できる情報を手軽に入手できる環境が必要です。私たちはそう考え、新聞の購読料への課税を最小限にするよう求めてきました」
欧州各国では、書籍や雑誌も対象にしている
信頼できる情報を手軽に入手できる環境というのは、今も「紙の新聞」なのだろうか。ほとんどの国民がインターネットを通じた情報をスマホで見るように変わっているのではないか。ところが、声明ではインターネットを以下のように切り捨てる。
「最近では、不確かでゆがめられたフェイクニュースがインターネットを通じて拡散し、世論に影響するようになっています。そうした中で、しっかりとした取材に基づく新聞の正確な記事と責任ある論評の意義は一段と大きくなっています」
つまり、インターネット上にはフェイクニュースが氾濫しているので、紙の新聞こそが信頼できる情報なのだ、と宣言しているのである。
もちろん「知識に課税しない」という欧州各国の姿勢には見習うべき点も多い。消費税率が軒並み20%前後の欧州各国では、フランスやドイツ、イタリアなどで軽減税率が適用され、イギリスは非課税だ。ただし、それは新聞に限ったことではなく、書籍や雑誌も対象になっている。インターネット上の情報サービスも対象にすべきだという議論が広がっている。