日本最大のニュースメディア「Yahoo!ニュース」を知らない人は、まずいないだろう。ニュースとジャーナリズムの主役だった新聞が衰退する中、登場からの20年余りで月間150億ページビュー(PV)を誇る巨人になった。その育ての親とも言える奥村倫弘氏がヤフー株式会社を去り、4月から東京都市大学メディア情報学部教授に就任した。若い学生とともにネットメディアの在り方を考えていくのだという。奥村氏が教授しようとする「ニュースメディアとジャーナリズムの現状、将来」とは? 存分に語ってもらった。

東京都市大学メディア情報学部教授に就任した奥村倫弘氏。1998年に読売新聞からヤフーに移った ©坂木みずき

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1日5億PV、オンラインメディアで圧倒的シェア

 まずはYahoo!ニュースの巨大さを見ておこう。

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 Yahoo!ニュースは現在、全国紙や地方紙、通信社、テレビ局、雑誌、新興のネットメディアなど540超の「ニュース提供社」と契約している。政治、経済、国際といった従来型ニュースだけでなく、スポーツ、エンタメ、キャリア、投資、健康などあらゆる分野をカバー。1日当たりでは、配信記事4000本前後、PVは5億をたたき出している。

 日本人はどのメディアをどの程度の頻度で利用しているのか。英国のロイター・ジャーナリズム研究所が毎年公表している「デジタル・ニュース・レポート2018」によると、「新聞・テレビ・ラジオ」のいわゆる旧メディアでは、NHKが首位。それが「オンライン」メディアになると一変。トップは圧倒的にYahoo!ニュースで、2位のNHKを大きく引き離している。

Infoseekやgooと何が違った?

 なぜ、Yahoo!ニュースはここまで大きくなったのか。事業をけん引した奥村氏に「そもそも」から尋ねた。

ヤフージャパンの現在の本社が入る「東京ガーデンテラス紀尾井町 紀尾井タワー」 ©AFLO

「読売新聞の記者だった私は1998年、ヤフーに転じました。学生のころからコンピューターが好きで、ネットでニュースをやりたかった。ヤフーはその2年前、96年に創業したばかり。私の社員番号は82番でした。偶然ですが、『ヤフー』と読めるんですよ(笑)。昨年12月時点でヤフー本体の従業員数は約6600人ですから、急成長ぶりが分かると思います」

 入社当時、日本はインターネットの黎明期であり、ヤフーも既に開業年から「Yahoo!ニュース」を始めていた。ロイター通信や毎日新聞など契約先の記事を無料で読ませ、アクセスに応じた広告収入を得る仕組みだ。当時は、Infoseekやgooといった競合他社も同様にニュースを扱っていた。

 では、Yahoo!ニュースは先行組とどこが違っていたのだろうか。「今思えば、の話ですが」と奥村氏は言う。

「一つはニュースの見出しをトップページで見えるようにし、更新頻度も上げたことです。Infoseekやgooといった大手ポータルサイトもニュースを扱っていましたが、トップでは『ニュース&天気』の7文字しか見えない。私たちは、配信記事に11字(現在は13字)の見出しを付けてトップページで見える形にした。数ある配信の中からトップに掲載すべき価値あるものをヤフーの編集部で選ぶ。ニュースの価値付け、編成をヤフーが行うようになった。そこが他のポータルと違いました」