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2019/07/18

新聞社にはニーズを上回る「販売力」があった

「広く知られているように、Yahoo!ニュースは基本、自らニュースを作っていません。4年前から『Yahoo!ニュース特集』というサービスを始め、社会派の記事を独自に取材・配信してはいます。高い評価も得て、新聞各社からも注目されてはいますが、記事本数の比率は微々たるものです」

「一方、ITmediaのような新興メディアは、技術ニュースを自社制作しています。ただし、伝統メディアがやってきた分野にはそもそも踏み込めない。記者クラブに入ってないし、組織取材の体制もないし、地域に取材ネットワークもない。

 つまり、新聞社とは全く違うやり方、違う分野で取材しているわけです。そう考えていくと、ネットニュースは新聞報道を食ってはいない。逆に言うと、もともと新聞記事には、読者の欲する情報がなかったと言える。新聞や雑誌しかなかった時代には、情報収集の手段として、ある意味、仕方なく、そこにお金を払っていたという図式です。そうこうしているうちに、Yahoo!ニュースなどに欲しい情報がたくさん出るようになった。しかも、多くはタダ。で、そっちを見ているうちに、さらに『自分たちの欲しい情報がない』ことを確信したのではないでしょうか」

ヤフージャパン本社内のオープンラウンジ ©文藝春秋

「これも私見ですが、これまでの新聞社には、大衆読者が必要としていなかった情報を販売する力が備わっていたと思います。端的に言えば、販売力。販売店網とか、月極め購読とか、宅配制とか。そうした力によって、大衆ニーズがない記事であっても売り続けることができた。部数減は、その反動だと言えるでしょう」

『弁護士ドットコム』『Yahoo!ニュース 特集』……新聞の得意分野が切り崩される

 ネット全盛の今も、新聞側は「ネットに記事を提供しているのは新聞」「ジャーナリズムを担っているのは今も自分たち」といったプライドを捨てていない。内輪では「ネットニュースばかり見ているとバカになる」と公言する幹部もいる。

 そんなことを言い募って改革を怠れば、取材・制作の分野でもネットに追い抜かれる、と奥村氏は断言する。

「例えば、1行10~12文字が主流の新聞記事は、今も80行、原稿用紙2~3枚分で“大原稿”です。それ以上の長い記事は紙幅の都合でなかなか書けない。ですから、必要最小限の事実関係のみを盛り込んだストレート記事が主体です。しかし、ネット記事には実に多様なパターンがある。原稿用紙10枚程度の記事は当たり前に存在し、読まれています」

「内容面でも、新聞が得意とされていた分野を切り崩している。法律に強い『弁護士ドットコム』、先ほども言った深掘り記事の『Yahoo!ニュース 特集』、そのほか金融や経済に特化したニュースサイト……。大学教授らの専門的な知見をたっぷり読める解説中心のサイトもたくさんあります。解説、深掘り、専門性などの分野は、既に新聞優位ではありません。弱者に寄り添う記事も新聞の独占ではなくなってきました」

「ストーリーで読ませる長い記事なども含め、ネット発の記事がSNSで拡散され、多くの人に読まれる傾向は定着しました。小規模のネットメディアには全国的な自社取材網はないけれど、ネットというネットワークはある。そんな状況下で独自の発展を続け、玉石混交や淘汰の荒波を受けつつも、独自の発展を見せているのです。逆に新聞は第1報中心のままであり、『その後どうなったか』をほとんど追えてない。自粛や忖度を疑われるケースも増えたし、縦割りの取材組織と記者クラブ張り付き体制も変えていない。だから、読み手に突き刺さったり、共感を呼んだりする記事を出せなくなっているのだと思います」