〈GSOMIAを終了するにしても、これを6カ月後に猶予することを提案する――〉
11月23日の午前0時に迎える日韓軍事情報保護協定(GSOMIA)の失効期限。8月に破棄を表明した文在寅大統領だが、最終期限を目前にして、韓国国内では混乱が収まる気配がない。
冒頭で紹介したのは、失効期限が1週間後に迫った11月15日付の韓国3大紙「中央日報」電子版が報じた“奇策”だ。学界関係者や元外交・安保当局者などが3時間にわたり議論した結果、慌ててGSOMIAを破棄するのではなく、「延長または終了猶予」を提案してはどうかというのだ。そのために必要な「GSOMIA延長のために文大統領レベルの特別宣言」も提言された。
ソウル駐在のジャーナリストが語る。
「日本が韓国への輸出規制強化措置を取ったことへの報復とされるGSOMIA破棄ですが、実際は、当時疑惑の追及が続いていた腹心の曺国(チョ・グク)氏から国民の目をそらすためだったというのが韓国では通説になっています。貿易問題に対して、全く違う安保政策で対抗することになってしまったわけですから、外交交渉など上手く進むわけもなく、事態は膠着。文政権は袋小路に入っています」
この事態に怒り心頭なのはアメリカだ。破棄となれば、日米韓による東アジアの安保秩序が崩れるのは免れない。アメリカは、矢継ぎ早に政府・軍高官を韓国に派遣。在韓米軍の駐留経費の負担増も持ち出しながら再考を促している。
「文在寅大統領は15日に、訪韓中のアメリカのエスパー国防相と会談しましたが、会場となった韓国大統領府には、エスパー氏の他、米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長、エイブラムス在韓米軍司令官、シュライバー国防次官補、ハリス駐韓米国大使がズラリと並ぶ光景がありました。米軍最高首脳部がソウルに顔を揃えて、文在寅大統領に圧力を加えた格好です」(同前)
しかし、文大統領の答えは「ノー」。改めて拒否の姿勢を示したのだった。
ひねり出される“ウルトラC”
文在寅大統領の強気な姿勢に対して、韓国国内に、3カ月前にGSOMIA破棄を歓迎したムードはもはやない。強気な姿勢を崩さない文在寅大統領に対して、国内は動揺を隠せない。